■PRIZONER 〜ルフィ



月の明るさにほっとしつつ、足の赴くままに向かったのはみかん畑。
みかんの木を背にし、すとんと腰を下ろす。

何であんな夢見たんだろう?もう自由になったっていうのに―
こつん、と頭をみかんの木につけると大きな月。

忘れることなんてできないのは分かってる・・・けど、こんな風に過去に囚われるなんて―

どうしたら―


結論などでようはずもない考えに逡巡していると...

ガサガサッ!!
驚いて振り向くナミの目に映ったのは、さっき夢で必死に助けを求めた船長の姿だった。
「げっ、ナミっ」
しまった、という顔で後ろ手にみかんを隠しつつ後ずさる。

「待って、ルフィ。待ってよ」
いつもなら即座にグーを飛ばすところであるが、後ずさるルフィの姿が夢と重なり、ナミは彼を引きとめずにはいられなかった。

「どうしたんだよ、ナミ。何か変だぞ」
いつもと違うナミの声に、ルフィはけげんそうな顔で、とことこと近づいてくる。

ダメ・・ルフィに知られたくない―
ナミはルフィに触れようとして、少しためらいその手を下ろした。

「何でもないわ。ちょっと夢見が悪かったから風にあたりに来ただけ
・・・あんた またみかん取りに来てたのね。今日は見逃したげるからもう部屋に戻りなさいよ」
無理に笑顔を見せるナミ。
だが、ルフィは動かない。いつもは見せることのない厳しい表情でナミを見つめる。
静かな、それでいて真摯なその瞳からナミは目をそらせない。

「昔の・・・あいつの夢だったのか?」
いきなり核心をつかれ、たじろぐナミに構わずルフィは言葉を続ける。

「今、ナミ笑ってたけど、村で泣いてたときと同じ目だった」


ルフィ、あんたって..何で―

思わずナミは目を伏せ、ポツリと語り出す。
「夢の中でね、私は水槽みたいなとこに閉じ込められてたの・・・あんたは私のすぐ近くにいるのに、どんなに叫んでも気づいてくれなくて、行っちゃうの・・・
そして、アーロンの声が聞こえてきて・・・」

ナミは悲痛な面持ちに満ちた顔をあげる。
「もちろん、ただの夢よ。現実じゃないって分かってる・・・でも、またすぐ同じような夢見るかも知れないって・・・いつまでこんな夢見るのかって、考えたら・・・すごく怖くなったの」



そこまで言ったところでナミの体はルフィに引き寄せられた。
目を見張るナミの耳に、ルフィの強い声音が響いた。


「俺がそんな夢見ねぇようにしてやるっ」


そして―――



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