惚れた男の体には一本の線がある。
生と死を分かつ線。
或いは私とアイツを分かつ線。
その場には居合わせなかったけれど私には分かる。
あの傷を負った時のアイツの顔。
笑ったに違いない。いつものあの憎たらしい不敵な顔で。
全てに自分でケリをつけて逝こうとしてたんだろう。
そして恐らくは、そこに私の入る隙はないのだ。
もう止めてと言うことはできない。
私がそうだから。
私は私の夢を邪魔する者を決して許しはしない。この肩の傷にかけて。
アイツはアイツの夢を邪魔する者を決して許しはしないだろう。あの胸の傷にかけて。
鏡に映すように、こんなにも私達は同じなのに―
いや、鏡に映るからこそ一つにはなれないのだろうか。
惚れた男の体には一本の線がある。
私には越えることのできない線が。
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