穢れを知らぬ白刃は命を吸って生まれ変わる。
背後の敵を斜めに切り上げ、返す刀は正面の敵の左胸に没していく。
音もなく滑らかに。
表情を変える間もなく最後の敵は絶息した。
崩れ落ちる身体を片手で支え、ゾロはゆっくりと刀を引き抜く。
獰猛な瞳で、酷薄な笑みで。
怖くないと言えば嘘になる。
何度その姿に底の見えぬ冷たさを感じてきたことか。
行く手を阻むように重なる屍と血だまりをものともせず、ゾロは真直ぐこちらに向かってくる。
この男を阻むものなどここには何もない。
目の前に立つと何も言わず、立ち尽くす私の顔を上向かせる。
一瞬、その瞳までが赤く染まったように感じたのは気の所為だろうか。
その姿を見つめる。
手を触れることなど赦されない。
ただ見つめる。息すら忘れる程に。
血に彩られた刃と―
血色の衣を纏う死神に―
その美しさにただ惹かれるだけ。
色のない無数の瞳に見つめられる中、私達は血塗られた口づけを交わした。
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