喧嘩の後は気まずいったらない。特に船上では。
顔を合わせない訳にはいかないし、合わせたら合わせたで露骨に無視されるのも堪える。
仕方ない今回は折れてやるか、覚悟を決めてゾロは女部屋へと降りていった。
靴底で扉を二、三度叩く。応答はなかったが扉には鍵はかかっていなかった。
薄ぐらい部屋のベッドにナミは寝ていた。
頭まで布団をかぶっている。不貞寝か?
そんなことを考えゾロはベッドに近づく。
「ナミ・・・・・・」
続かない言葉に暫しの間、沈黙が続く。
「さっきは・・・・・・・・・・悪かった・・・と思ってる」
やっとの思いで出した言葉にもナミは反応しない。
「機嫌なおせよ」
ベッドの上に身をかがめると、するりと伸びた腕に引き寄せられる。
お、脈ありか―?
明るくなった表情はすぐに固まる。
女の全身は布団に包まれたままで腕を出した様子はない。
じゃあ、この腕は―
布団の中で人型が小刻みに震えている。
イヤな予感が走る。まさか―
ゆっくりと布団が動く。果たして出てきたのは癖のない黒髪だった。
くすくす笑いながらロビンは半身を起こし、絶句するゾロに身を寄せる。
「甘いわね」
妖艶な笑みを濃くし、ますますゾロに顔を近づける。
「まず女の顔を確認するものよ、特に閨ではね―」
至近距離で瞳を覗き込まれ、慌てたゾロは首に絡まるロビンの腕から逃れようと目の前の女の肩を掴む。
その直後。
ガタン!!
天井の扉が開く音にゾロはギクリとする。
コツ、コツ、コツ。足音が止まると押し殺したような低い声が聞こえてくる。
「あら、お楽しみのとこ邪魔して悪かったわね」
どこがお楽しみだ、そう言おうとした瞬間、首にかかっていたロビンの腕が跡形もなく消え失せていたことに気づく。
もしかしてこの体勢は、ロビンを押し倒そうとしてるように見える、か?
恐る恐るゾロは首を後ろに向ける。
もしかしなくても、だ。
背後に立つナミの瞳を目にし、ゾロは覚悟を決めた。
「いつまでもそこで寝てるがいいわっっ!!」
右頬に強烈な一撃をお見舞いし、ナミは部屋を後にする。
ゆっくりとベッドに崩れ落ちるゾロと入れ替わりに起き上がるロビン。
「さ、傷ついたお姫様を慰めに行こうかしらね」
すれ違いざまそう言って、ロビンは含み笑いを残した。
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