店のガラス越しに貴女の姿を見た。少し寂しげな表情で。
向かいにあの野郎がいなければ飛びこんで行って笑わせてあげるのに。
見たくはないのに。
貴女にそんな顔をさせるアイツも。
アイツにそんな顔をみせる貴女も。
それでも目を離せない。
アイツが席を離れる。貴女は益々寂しげな表情で。
それでもきっと貴女はアイツを止めない。
雨が降りだした。
それは多分貴女の為。
雨は一筋ガラスを弾く。
その軌跡は貴女の頬に重なる。
雨が降りだした。
それは泣かない貴女の瞳から一筋零れ落ちた涙。
雨は降る。
ガラスは雨に濡れ、もう貴女の顔も見えない。
せめてもう少し降り続くといい、そんな思いだけを残しその場を後にした。
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