ホイップクリーム

*titled:れーな.Kサマ



彼女の前に温めたカップとソーサーを滑らせて、それから自分の分も。
調理台からボウルに入った生クリームを持ってくる。

やかましいヤツラは揃って夢の中。
「やっとあいつら大人しくなったなぁ」

「お母さんは毎日大変」
午後の陽射しのような笑顔に微笑を返して。

香ばしい湯気を立てるマンデリンにそっと生クリームを落とす。
黒の中にじんわりと白はしみいって、そこに柔かな色が生まれる。

温かくて優しくて。
俺にとっては宝石より大事な時間。
そう言ったら、

「あら 私は宝石の方が好き」ときたもんだ。
ヘコむ俺を見てケラケラと笑う彼女。
はい、俺が間違ってました。勝ち負けなんてハナから決まってる。

「ほら見て見て〜、サンジ君」

楽しそうな声に顔を上げれば、彼女の鼻の下をホイップがもこもこと飾っている。
何とも愛らしいヒゲ面で。

「サンジ君には逆―」
彼女は白い泡を人差指ですくうとペタリと俺の顎にくっ付ける。

「――???」

「シェービングクリーム」
そう言って彼女は笑いながら身を乗りだす。
白い指はそのまま俺の顎を持ち上げ、可愛い舌はペロリと甘い泡を舐める。

「―ね?」


甘いお話


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