字書きさんに100のお題
アルバーナの雨は眠っている間に通り過ぎてしまっていた。
欠伸の数が倍増したわね、と思いながらナミは大きく開けた口を片手で隠した。
これまでは欠伸どころか息つく暇さえなかったのだから、反動が出たとしても致仕方ないところだろう。
そんなことを思いながらナミはまた欠伸をした。
泥のような眠りから一人覚め、二人覚め、皆が起き出してもルフィだけは目を覚まさなかった。
目を覚ました方とて皆が皆、身体のあちこちを痛めていて、自主的或いは船医の厳命の元、呆けた表情でベッドに横になっていたのであるが。
それでも調子が戻ってくるとすぐに寝るのに飽いて、ポツリポツリと行動を始める。
サンジとウソップは買出しに出かけ、チョッパーは後を絶たない患者の為にせっせと薬を作り続け、気づけばゾロもどこかへ消えていた。
けれど面白いのは見ていると皆が皆、どこか本調子ではなさそうなのだ。
精彩を欠く、というか張りがないというか。
やはりそれは寝続けている船長に原因があるのだろう。
ルフィのあの有り余るエネルギーは知らぬうちに皆の推進力になっているのかもしれない。
そんなことを考え、また欠伸をし、ナミはふるふると頭を振る。
「ねぇ、ビビ。何か本ある? このままぼんやりしてたら私までバカになっちゃう」
「それだったらパパの部屋に行けばいくらでも。
後で案内しますね。ナミさんが訪ねていったらきっとパパ大喜びだわ」
ルフィの頭に水気をきったタオルを乗せ、ビビはナミの方を向いて笑う。
「うん、お願い」
笑顔で応じながらナミは立ち上がる。
ナミはルフィの子供のような寝顔を覗き込む。
ま、折角だから今のうちにのんびりさせてもらいましょうかね。
コイツが目を覚ませばまたあの嵐のような日常に戻るんだから。
そうしてナミはうん、と伸びをしながら大きな欠伸を見せた。
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