字書きさんに100のお題


  93.遥か彼方<コウシロウ> Date:  
子供達を連れて出稽古に出た島で、手配書を一枚手に入れた。
駐在所とでも言ったほうがピンと来る末端の支部で、年のいった海兵は「この辺は情報が遅いからそいつだって今どうなってるかは分からんよ」と笑って手配書を私に手渡した。
「きっと元気でやってますよ」
笑って礼を言った私を海兵は怪訝そうな顔で見送った。

稽古を終え、宿に戻る。二対三で負けはしたが、いい試合だった。
畳の上に手配書を置く。
グランドライン発の手配書。随分と遠くまで行ったものだ。
見覚えのない風景の中に、血に染まった青年が居た。けれど、少年の頃から持ち合わせていた不器用な硬さはまだ変わっていないようだ。
その顔を心に焼きつけ、私は手配書を折った。先端を尖らせ、左右に翼を作る。
それを二階の窓から外に向けて飛ばした。宿の庭の向こうはすぐ海だ。

「あーーっ!! すげぇ! 飛んでる!」
目ざとい子供が、空を横切る翼を指差し叫ぶ。
「センセー! 作り方教えてよ!!」
「いいとも」

すぐにドタドタと階段を駆け上がってくる音がする。
翼は風に乗り、海へと向かう。それでいい。


どこまでも、行けるとこまで行っておいで。

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