字書きさんに100のお題


  99.1つと無い <ロビン+(ゾロ)ナミ> Date:  
濃い霧の中で細い吊り橋が激しく揺れている。
その上を走る人影が三つ。更にその後を追う人影の数は知れない。
三つの影のうちの一つが立ち止まり、体の向きを変えた。
「テメエは先に行けっ!!」
「ゾロっ!?」
「いいから行けっ!」
向けられた鋭い声にも躊躇いを見せるナミの腰に女の腕が巻きつく。幾つもの腕がロープのようにナミの体を橋の向こう側へと引っ張っていった。
「ロビンっ!!?」
ナミの視線の先でロビンは優雅に笑ってみせた。
「剣士さんのことは私に任せて」
ナミが向こう側に渡ったのを見届けると、ひらりと手を振り、ロビンはゾロの背を追っていった。
そのロビンの背が見えなくなると、ナミの体を捕らえていた腕が消えてなくなる。
それと同時に吊り橋が向こう側から切って落とされた。ロビンの仕業だろう。
ナミは薄暮の色に染まる靄を見つめ、それから唇を噛むと身を翻した。


*************************************


予想以上に戻りの早かったゾロとロビンを迎え、無事に出航できたその夜。
就寝前の女部屋で、ナミは長い溜息をついた。
「どうしたの?」
大乱闘の後にも関わらず、かすり傷一つないロビンはいつものゆったりとした仕草で首を傾けた。
「ちょっとね、私ってどうしても庇ってもらう立場なんだなぁって。ゾロを追いかけていけるロビンが羨ましくなったの」
「人には向き不向きがあるわ」
ロビンは開いていた本をパタリと閉じる。
「それを言ったら、私だってアナタみたいには上手に海を読めないのよ、航海士さん?」
ロビンの言葉にナミは苦笑を浮かべる。
「その理屈は分かるんだけどね」

それが堂々巡りの我侭なのは分かっている。
大事な人のせめて背中くらいは守りたいという思い。けれど、のこのことついて行ったとしても背中を守るどころか、丸々自分が守られるはめになるのも分かっているのだ。

「私ってば無力」
溜息をついてベッドに寝転がったナミを見て、ロビンは意外な事を聞いたという顔で目を瞬かせた。
「アナタが無力?」

知らないというのは本当に罪なことだ。
無力だと嘆くその存在こそが無比の力だというのに。
一刻も早く彼女のもとに戻るべく、鬼の形相で敵を吹き飛ばしていった剣士の姿をどう伝えようか。
残念ながら駆けて行った先は、案の定あさっての方向だったが。

思い出し笑いをしながらロビンは暫し悩むこととなった。




request
R to N. words:剣士さんのことは私に任せて by 匿名様

[前頁]  [目次]  [次頁]


- Press HTML -