字書きさんに100のお題
午後のお供にはミルクたっぷりの紅茶を。
くるくるとスプーンを回せば、琥珀色をした飲み物はやがて柔らかなミルクの色に染まっていく。
ふ、とその手を止めると、ナミはゆっくりとそのスプーンを持ち上げる。
スプーンの丸い先端から落ちる雫が一滴、二滴・・・三滴。
落ちる雫がなくなると、ナミは再びスプーンをカップにひたし、持ち上げる。
「何見てるの? さっきから熱心に」
カップをじっと見つめたままのナミに声をかけたのはサンジだった。
そうして覗き込んだナミの手元で、最後の雫が落ちていく。
小さな一粒の雫がカップの表面で弾け、広がり、消える。
それは刹那の王冠。
「ミルク・クラウン!」
得心したようなサンジを見上げ、ナミは笑う。
「サンジ君に似合いそうな王冠よね」
「俺ってミルクの国の王様?」
くくく、と肩を震わせながら尋ねるサンジにナミは頷く。
「そう、こーんな髭つけちゃったりして」
そう言いながらナミはサンジの鼻の下を指差して、くるりと巻いた髭を描く。
サンジは、さも可笑しそうに続ける。
「住んでるのはスポンジのお城で、壁は生クリーム製」
「で、ハーレムには選り取りみどりの乳牛」
「牛なの!?」
「牛よ!」
きっぱりと言い切るナミの言葉にサンジは大笑いする。
笑いすぎで滲んだ涙を拭くと、サンジはナミの前に恭しく手を差し出す。
「ハーレムは作らないって約束しますから、ミルクの国の女王様になってくれませんか?」
「いいわよ」
サンジの手のひらに片手を預け、もう一方の手でカップを持ち上げる。
そうしてナミはにっこりと微笑んだ。
「けど、私の王冠はちゃんと金で作ってね」
済ました顔でそう言うと、ナミは王冠の溶け込んだカップに唇を寄せた。
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