字書きさんに100のお題
12.曇<ルフィ+サンジ+ビビ+ナミ> |
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「ビビは今日は俺と釣りをする!!」
「いーや、俺と一緒におやつを作る!! ね? ビビちゃん?」
困り顔のビビを挟んでルフィとサンジが睨み合いを続けている。
「こないだ言ってたよな。今度一緒に釣りするって!?」
「黙れ、クソゴム!! てめェよりもずっと前に俺ァビビちゃんと約束してたんだよ!!」
ビビの腕を掴もうとしたルフィの手を、サンジは蹴り飛ばした。
「俺の方が先に約束してたぞ!!」
「フカシこいてんじゃねェぞコラ!! 俺の方が先だっつの!!」
「あ・・・あの・・・二人とも、ちょっと待―――」
躊躇いがちにビビが口を開くが、そんなビビの前で男二人の舌戦は更に激しさを増していく。
約束を取り付けたのはどちらが先か。戦いの焦点はそこに移り、三日前だ、一週間前だ、一ヶ月前だ、挙句一年前だと言い出す始末で、このまま放っておけば自分が生まれる前からの約束にされてしまいそうで、思わずビビは天を仰いだ。
すると、上から見下ろしている人物とビビの目が合った。ビビに向けられている大きな瞳がからかうように笑う。
「もう!!」ビビは両手に握りこぶしを作って、胸の前でぶんぶんと振り回す。
「ナミさん! 見てたんなら笑ってないで助けてください〜〜!!!」
ビビの心の叫びを聞いてナミはぷっと吹き出す。
「アンタ、男の二人もあしらえなくてどうすんのよ。世間勉強だと思って自力でなんとかなさい?」
絶対的にこの手の経験値が足りないビビは、うっと言葉を詰まらせ、途方に暮れたように眉根を寄せた。
そんな仕草は益々愛らしい。ナミはくすくすと笑いながら、それにね、と意味深な視線をビビに送る。
「人の恋路を邪魔するヤツは、馬に蹴られてなんとやらってね。そんな訳でお邪魔虫はこの辺で退散ー!」
おどけた口調でじゃあね、とナミが手を振った時だった。
「そんなこと言わないでナミさんっ!!! ほら、僕がいつも貴女の傍に」
本能的反射的にナミに手を差し伸べたサンジを見て、ルフィはししし、と笑った。
「じゃ、決まりだな」
「あ・・・・」
「・・・・・・・馬鹿」
三者三様の表情を眺めて首を傾げたビビを、ルフィは小脇に抱えるようにして連れ去る。満面の笑顔で。
本日の天気。曇りのち晴れ。
ナミはその場にへたり込んだサンジにちら、と視線を送り、肩を竦めた。
でもって、ところにより一時雨。
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