27.骨 <ロビン+ナミ> | Date: |
ベッドの上には開きっぱなしの本がいくつも置かれている。
寝物語の筈が、話が地図の歴史に及ぶとナミはロビンのベッドに移ってきて熱心に話に耳を傾けた。
「地図というのは文字よりも先に発明されたと考えられてるの」
開いた本の一つ、簡単な四角形で示された家や畑の絵地図を指してロビンは言った。
「こっちの地図は?」
ナミが指した先には、円で示された地図と見たことのない形の生き物が描かれた図があった。
「これは、世界が平面だと考えられていたころの地図。その頃広まっていた宗教の影響ね」
ふうん、と伸ばしていた腕を戻そうとしてナミが動きを止めた。
「っ!?」
小さな悲鳴をあげてナミは左肩を押さえていた。
「航海士さん?」
「大丈夫。ここんとこ急に寒くなってきたでしょ? たまにね昔の傷が痛む時があるの。引き攣ったみたいに」
肩を押さえたまま、ナミはぎこちない笑みを見せた。
「船医さんを呼んでくるわ」
「大丈夫。すぐ治まるから」
だったら、とロビンはナミの手を肩から下ろした。
「ちょっと脱いで貰ってもいいかしら?」
ロビンの言葉にナミは素直に応じた。
夜着の上が肩から滑り落ちた。微かな音をたててオレンジの髪が肌の上に落ちた。
なめらかな肌に鮮やかな墨色。
その下に幾つもの亀裂の跡が伺えた。ロビンはほんの僅か痛ましそうな顔を見せた。
「今、温めたタオルを持ってきてあげる」
腰を浮かせたロビンをナミは引きとめた。
「それよりも」
そう言ってナミは、ロビンの両腕をとって自分の肩に乗せた。
背中から抱きしめられた格好で、ナミはロビンの胸に身体を預けた。
「少し、こうやってくっ付いててよ」
腕の中に抱えた華奢な生き物に、正直ロビンは戸惑っていた。
こんな風に自分より小さなものを抱いたことなどなかった。
するりと絡められた腕。
細い骨。
どこに力を入れれば容易く骨が砕けるか。そんなことなら幾らでも知っているのに。
腕の中の骨を、この後一体どうしたら良いのかはさっぱり分からなかった。
ねぇ、とナミは甘えた声を出した。
「もっと沢山の腕で抱いて?」
ロビンは軽く目を閉じると、ナミの望み通りに幾本もの腕でその身体を抱いた。
「あったかい」
どこに手を置けばいいのか、たどたどしく彷徨う腕を見て、ナミは微笑んだ。
「ロビンは沢山の手を持ってるんだから、もっと色々なものを抱きしめたらいいんだわ」
ナミの言葉に、困ったような口調でロビンは溜息をついた。
「航海士さんは私を甘やかしすぎるわ」
「私の方が得意なことだってあるのよ」
そう言ってナミは笑った。request
R to N. words:脱いで貰ってもいいかしら? by 鳥さん