33.意思 <サンジ+ビビ+ナミ> | Date: |
「人でなし〜〜!」
「女の敵〜〜!!」
キッチンのテーブルに突っ伏しながらオイオイと涙を流しているのはナミとビビ。
その向かいで、非難の集中砲火を浴びているのは、誰あろう、全てのレディのガーディアンを自任するサンジだった。
「そんなこと言わないでさぁ」
困り顔に無理矢理笑みを乗せたサンジは、二人に向け、本日のおやつを差し出した。
「本日のおやつはショコラ・ムースケーキでございます」
コホン、と咳払いで気分を切り換え、サンジは説明を開始する。
「タルト生地の上にショコラ・ムース。更にその上にキャラメルムースの二層構造。コーティングはグラッサージュショコラで大人の装いに仕上げております」
優雅に一礼して顔を上げてみると、そこには恨めしげな顔をしたレディが二人。
「・・・・え、えっと」
サンジにしては珍しく、言葉を失うハメになった。
何が悪いのか、と言えば天候だった。
冬の気候帯に入った途端、船の進みが悪くなった。というか、悪すぎた。亀が泳いだほうがまだマシといった感じすらしていた。
そんな中、前の寄港地で目にした、とウソップが張り切って作ったのが「コタツ」という名の暖房器具だった。
これが特に女性陣に好評で、いつの間にやら女部屋専用となっていたコタツで二人ともホコホコと丸くなっていた。そして、運動不足の結果として・・・・・まぁ、後は察して頂きたい。
甘いものは控えるべし、それは分かっていても、目の前でカットされたケーキはまさに甘い誘惑を仕掛けてくる。
テーブルを齧りそうな顔で耐えていたビビの手が、やがてピクリと動いた。
「・・・・・・・・・・ナミさんっ! 許してっ!!」
「あぁぁっ!? 酷い! この裏切り者っ!!!」
ナミの非難の声をよそに、パンと両手を合わせて頂きますの宣言をすると、あっという間にビビはケーキを頬張っている。
この子、段々ルフィに似てきた?
ちょっと呆然としてしまうナミだった。
「いやーーーん、美味しい!」
頬に手をあて、うっとりと感想を漏らすビビに、サンジは目を細めた。
どうせ食べてもらうなら、一口で丸飲みして「美味い!」なんて言う野郎共よりレディに味わってもらう方がよっぽど張り合いがある。
可愛い口に吸い込まれ、柔らかな舌の上で転がしてもらった後、吐息と共に放たれる感嘆の言葉。
それはもう、背筋がゾクゾクするほど感じるというものだ。
ビビに負けず劣らずうっとりしていた顔を引き締め、サンジはナミに視線を向ける。
「で、ナミさん? もう、我慢できないんじゃない?」
にっこりと笑顔でウインクを一つ。
「恨むわよ〜〜、サンジ君」
ううう、と唸った後、ナミはケーキの乗った皿を引き寄せた。
「どうぞ、末代までご存分に」
すました顔でそう応じると、サンジは綺麗に葉の開いた紅茶をカップに注いだ。request
S to N. words:もう、我慢できないんじゃない? by 鳥さん