字書きさんに100のお題


  43.新世界 <ガン×ラキ> Date:  

未来永劫続くとも思われた戦が終わった。
依然、先の予測は難しい状況ではある。だが、一度絶望を見た者達にとっては大地が厳然として存在し続けること、そしてそこに生きる道があること、それがただ喜ばしかった。
射し込む光は優しく、スカイピアの民の顔は等しく明るい。

新たな国の舵取りを任されたのはかつて「神」と呼ばれた男だった。
短い挨拶の後、ガン・フォールは奥へと下がる。それでも尚、民の喜びの声は止むことを知らない。


「凄い歓声だね」
背後からかけられたその声にガン・フォールは静かに振り向いた。
「ラキ・・・」
名を呼ぶその声は穏かで優しい。微笑に浮かぶ瞳も同じだった。
「よく・・・生きていてくれた」
「・・・貴方も」

ゆっくりとガン・フォールの元へと歩き出したラキは、だが後二歩程の位置で足を止める。
まるでそこに見えぬ壁でもあるかのように。

歓声はまだ止まない。
それは皆が、目の前の男が国の頂きに就くことを喜ぶ声だ。

立ち止まったままラキは切なげに笑う。
「また・・・遠い人になってしまうんだな」

対するガン・フォールは困ったような顔でくしゃりと笑ってみせた。
「全く嬉しいやら困ったやらだの。これからのんびり畑仕事に専念しようと思うていたのだが」
ふう、と溜息をつき、ガン・フォールは続けた。
「若い嫁でももらってな」

目を見張るラキにガン・フォールは両手を広げる。
「まだしばらくは険しい道になるやも知れぬ。それでも共に来てくれるか?」
見つめるその先で、ラキの瞳には見る間に涙が溢れる。

ガン・フォールの言葉は易々と躊躇いという壁を壊した。
言葉はない。
歓声も聞こえない。

一息にガン・フォールの胸の中に飛び込んで、ラキは返答に代えた。

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