字書きさんに100のお題


  46.SOS<チョッパー+サンジ+ゾロ(ナミ)> Date:  

よく冷えたアフタヌーンティーを乗せたトレーと共に、サンジは甲板にやってきた。
だが、そこには高いびきのゾロがいるだけで、一輪の花もない。サンジが肩を竦めたその時、階下から軽やかな声が聞こえてきた。
サンジは身を乗り出して手を振る。
「ナミさーん! よく冷えた紅茶がありますよー」
「貰う、貰うー」
笑顔のナミの隣にはチョッパーがいて、何事か二人談笑しながら階段を上ってきた。
その声が徐々に近づいてくる。
「ナミってやっぱり胸が大きくなったよな」
何気なく言ったのであろうチョッパーの一言が起爆剤となった。
知らぬ間にトレーは右に傾いていて、サンジは慌ててスライドしたグラスを建て直し、寝ていたはずのゾロは飛び起きてガッハガハ苦しそうにむせていた。
片やナミは平然としたもので、道理で最近肩が凝ると思ったなどと応じている。
のどかな昼下がりに、突然投げ込まれた爆撃から立ち直れていないサンジのトレーからグラスを二つ取ると、ナミは一つをチョッパーに渡す。
「お疲れ様。また今度よろしくね」
そう言い残してナミはみかん畑へと向かって行った。

その場に残ったチョッパーは、一仕事終えた男のすがすがしい顔で、一気にグラスを空けると一息ついた。
「ん? どうかしたか?」
男二人に無言のまま見つめられ、チョッパーは少々うろたえる。
「お・・・お前、朝から姿見なかったけど・・・・どこ行ってたんだ?」
サンジが尋ねる。ま、まさかまさか。
「ずっと女部屋にいたんだ。健康診断してくれって前から頼まれててさ」
あぁ、とサンジは安堵の溜息をついた。それなら納得がいく。健康診断か。健康診断ね。
健康・・・・けっ!?
「けっ、けけけけぇっ!?」
大事なぐるぐるが伸びきってしまうんじゃないかという勢いでサンジは眉を吊り上げる。
訳の分からない叫び声と、形相に思わずあとずさるチョッパー。
「けっ、けっ、健康診断つったら、アレか!? 服を脱いだり、下着を取ったりするアノ健康診断かっ!?」
「当たり前だろ。服着たままじゃ分かんねェだろ。なぁ、ゾロ?」
何をそんなに騒ぐことがあるのか、そんな顔でチョッパーはゾロに視線を向ける。
呆然とチョッパーを見つめていたゾロは、ぎこちないながらも「あぁ」と応じ、それから自分の手のひらに視線を移した。
ゾロは手のひらをじっと見つめ、それからその手を心持ち大きく広げた。
「・・・・・確かに」
「"確かに"、じゃねぇぇぇっ!!!」
重々しく頷いたゾロの襟首にサンジが飛びつき、ギリギリと締め上げる。半べそで。
「テンメェ、今何思い出しやがったぁぁぁ!!」
ガクガクとゾロの身体を揺らし、それからサンジはガクリとその場に崩れ落ちた。
逆上も突き抜け過ぎて、何かが切れてしまったらしい。
「何で・・・何でだよ・・・」
ゾロのズボン裾を強く握り締め、ほとほとと涙を零しながらサンジは呟く。
「マリモやらケモノやらが、あのタワワな果実を欲しいままに乱獲してるっつのうに・・・・俺は・・・・俺ときたら・・・・」
そのまま床に突っ伏して涙にくれるサンジを、チョッパーはポカンと、そしてゾロは痛ましそうな目で見つめていた。

「そうだっ!!」
二種類の視線の先で、おいおいと泣き続けていたサンジが突然顔をあげる。
ゾロの裾から手を離すと、サンジはクルリと方向を変え、正座でチョッパーを見上げる。
「チョッパー、いや、チョッパー先生。俺を弟子にしてくれっ!!」
そうきたか。
ゾロは溜息をついた。
「何でもするぜ! 見習いでいいから!!」
見習いっつーか、見るだけだろう。
冷ややかな視線のゾロとは対照的に、チョッパーは素直に喜んでいる。
「ホントか!? スゲェ助かるぞ」
じゃ、早速、とサンジは顔を期待に輝かせてチョッパーの後について行った。
ゾロはもう一度溜息をついて腰を下ろした。
あんな邪念満載の見習いは、どうせ最後にはナミにボコられて放り出されるのがオチだろう。
ようやく静かになったところで、寝なおそうと瞼を閉じたその時、上から声が降ってきた。
「あれ? アンタしか居ないんだ」
お代わり貰おうと思ったのに、と汗を拭きながら降りてきたナミを、ゾロが手招きする。
「何?」
ゾロはもう一度手を広げると、目の前のナミの胸に押し当てた。
ジャストフィット。
「確かに」
満足げに頷いたゾロの頭に、ナミは無言で拳骨をプレゼントした。


「ホント助かったよ。これでまた明日も健康診断ができる。一人じゃ大変だと思ってたんだ」
チョッパーの言葉にサンジは嬉しそうに頷いた。ナミの順番が終わってしまったのは心底無念だが、綺麗な花はもう一輪残っている。
「じゃあ、明日はロビンちゃんで」
「ロビンならナミと一緒に今日終わったぞ」
笑顔のまま凍りついたサンジにチョッパーはいともあっさりと引導を渡した。
「明日からは男の検診だぞ」
そう言ってチョッパーはウキウキと体を揺らした。
「楽しみだなぁ。人間離れしたヤツばっかりだからな。何がどうなってるのか隅々まで調べさせてもらおう」
サンジの口が力なく、チョッパーの言葉を辿る。
「男の・・・・ナニがどう・・・・・スミズミ・・・・・」
「けど、今日手伝ってもらうのはコレ!」
呆然とするサンジをよそに、チョッパーは手にした袋を開け、中身をサンジの両手にざらざらとあけていった。
「何だ、コレ?」
ようやく焦点の合ってきた目で、サンジはまじまじと手の中の物体を見つめる。
黒くて、乾燥していて・・・・・・
細長い胴体と、脚力のありそうな足が六本・・・・・・
サンジの顔から音をたてて血の気が引いた。
「それ、細かく砕いて欲しいんだ。薬効があるんだ、その虫」

「イィーーーーーーヤァァァァァ!!!」

絹を引き裂くような悲鳴でもって、乙女のピンチ回避。




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C to N. words:ナミってやっぱり胸が大きくなったよな by ふふ様

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