51.路地 <ゾロナミ> | Date: |
「ログが溜まるのに半日。それまで自由行動ね。あんまり騒ぎ起こさないで・・・・」
小遣いを手渡した瞬間、話も聞かずに飛び出していくクルーにナミは目を吊り上げて叫んだ。
「って人の話は最後まで聞けぃ!!」
それでも、飛び出した道の先で手を振る面々に、ナミの相好も自然と崩れる。
「ナミーーッ! 早く来いよぉ!!」
「はいはい」
苦笑しながらナミは皆の背を追い、歩き出す。その矢先、路地裏の暗がりから伸びた太い腕が背後からナミをさらった。
「・・・・・!?」
引きずり込まれ、悲鳴より先にナミはその腕に歯を立てた。
「い、痛ってェ!!」
思い切り噛みつかれて尚、腕はナミを捕まえたままだったが、弛んだ力にナミは悲鳴の出所を仰ぎ見た。
「・・・・って、ゾロォ?」
「オ・・・マエ、いきなり手加減なしかよ」
ようやくナミから手を離し、ゾロは顔をしかめながらくっきりと歯形の残る手をさすっている。
「当ったり前じゃない。どこの人さらいかと思ったわよ」
安堵半分、呆れ半分の顔でゾロを見ていたナミだったが、やがてその口元が嬉しそうにほころぶ。
「何? もしかして待ってたんだ? ココで。私のこと」
「仕方ねェだろ、船にゃ残ってるヤツがいんだから」
努めて無愛想にゾロが答える。照れている証拠だ。
「嫌だったら、行っていいぞ」
すい、とゾロは視線を外すが、その本心はあからさまに透けて見える。
船では見ることのできないその表情が愛しかった。
「馬鹿ね」
拗ねた子供をあやすような優しい微笑で、ナミは男の胸に身を預けた。
「嫌な訳ないじゃない」
「あれ? ナミ来ねェぞ!?」
いくらも経たないうち、表通りから聞こえてきた声にナミは弾かれたように顔を上げた。
やがて、ナミの名を呼ぶ声が幾つもあがる。
「探してる・・・・行かなきゃ・・・・」
抱きすくめる力に抗うようにゾロの胸に両手をあて、ナミは身を離す。大きな溜息と共にゾロの両腕が力なく落ちた。
「じゃあね」
寂しげな声音を耳にした瞬間、腕の噛み跡が疼く。
次の瞬間、腕は主の意思とは無関係にナミの手首を掴んでいた。
「もう少し・・・ここに居ろよ」
片手でナミの背を引き寄せる。あとほんの少し力を入れれば触れてしまいそうな位置に唇があった。急に空気が薄くなったように感じた。息があがる。声は囁きに変わった。
「もう少しってどれくらい?」
「・・・・・もう少し、だ」
答えになってないわよ、と吐息の中でナミは笑い、その唇をゾロに与えた。
もう少し。あと一分。あと一秒。
許されるのならば永遠を。request
Z to N. words:もう少し・・・ここに居ろよ by たまちよ様