字書きさんに100のお題


  60.アスファルト <ルナミ> Date:  

「ちょっと休むか」
コンビニの袋を置いて、突如道に寝転んだルフィをナミは唖然とした表情で見つめた。

時間は深夜を回って随分と経つ。
明かりのついている家はなく、車も、当然人の気配もない。
とは言え、余りにも唐突な行動に、躊躇うナミの手をルフィは引く。
躊躇いがちに腰を下ろすナミにルフィは笑いかける。
ルフィの隣に寝転べば、アスファルトのひやりとした感触が肌に沁みこんでいくようだった。
ワンブロック離れた場所にある信号は、ただ黙って赤の明滅を続けている。
「何か変な感じ」
空を見上げてナミは笑う。
小さい頃に悪戯をした時のような。ほんの少しだけ悪いことをしているような、そんなくすぐったい気持ちがする。
「だろ?」
答える声も笑っている。
ナミは静かに目を閉じる。
緩やかに頬を撫ぜる風には秋の気配が混ざり始め、少し気の早い鈴虫がその歌声を披露している。
傍らでルフィが身動きする気配がした。
ナミの開けた目に星が映る。
夏よりも鋭さを増したその輝きが、ふいに消えた。
身を起こしたルフィがナミの肩に手をかける。
肩に押しつけられた掌は熱く、アスファルトに押しつけられた肩は冷たい。

こんなところに寝てるから。
近づいてくるルフィの顔をナミは見つめる。

眩暈がするのはその所為だ、とナミは瞳を伏せた。

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