字書きさんに100のお題


  74.雨は降っているか? <ルナミ> Date:  
雨が降っている。

ログポースの示す先に辿りついた島は、通称を"雨島"と言い、その名の通り一年を通してほぼ毎日雨が降っていた。
ログが溜まるまでは一週間。三日を過ごすうちに様々な雨を見た。
霧のように漂う雨。
音もなく垂れる銀糸の雨。
或いは、地面を穿つほどの激しい雨。

そして四日目の今日も雨が降っている。
昼も過ぎた頃、扉を開けると宿のベッドにルフィが伸びていた。
昨日までは傘もささずに表に飛び出していって、夕方に冷えきった体で帰ってきては、真っ青な唇で好きでもない風呂に長時間浸かるといった生活を繰り返していた。
流石に飽きたか、懲りたかしたのだろう。
「ナミか?」
「うん・・・起きてたの?」
麦わらを枕元に置いたまま、目を覆うように腕を乗せていたので眠っていると思ったのだ。
「こっち座れよ」
私の問いかけには答えず、ルフィはそのまま身動きもせずにそう言った。
「雨は?」
「降ってるわよ。見えるでしょ?」
目を覆ったままルフィは「見たくねェ」と言った。

麦わらを被っていないルフィの姿はなかなか新鮮なのだが、どこかに違和感も感じる。
海に出られない海賊。
自分のあるべき場所や、やるべきことを失うと人は心許ない気持ちになるものだが、この男もそうなのだろうか。
そんなことをぼんやりと考えていると、ルフィの呟きのような声が聞こえた。
「お前は俺の女だよな」
「そうよ」
爪の一欠けらから髪の一筋まで、それらは皆、私のものであるのと同じくルフィのものだ。
「抱いていいか?」
「いいわよ」
ルフィの言う「抱く」がどちらの意味を持つのか分からなかったが、私にはどちらでもよかった。
どうせ外は雨なのだから。
のそり、と起き上がったルフィは、ベッドに腰掛けたままの私を背後から抱きしめた。
そのままルフィは動かず、私もただぼんやりと窓の外を見ていた。
今日の雨足は強い。
風が吹くと、まるでカーテンが揺れるように雨は揺らいだ。
「太陽が見てェなぁ」
ルフィはそう呟くと、私の髪の中に顔を埋めた。

雨はまだ止む気配を見せない。




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L to N. words:お前は俺の女だ by ひにゃこ様

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