78.イメージダウン <ウソップ+ナミ> | Date: |
「やらせろよ」
ジョッキを片手に、けれど真顔で迫ったウソップにナミは首を小さく横に振った。
「・・・・・だよなぁ」
だっはー、と大きく息を吐いてウソップは身体から力を抜いた。
「あのね」
空になったジョッキを置くと、うっすらと呆れ顔でナミはウソップの鼻を軽く捻った。
「私だってヒくわよ。そんな台詞じゃ、いくら何でも」
今夜のキッチン居残り組みはウソップとナミ。
残ったもの同士で酒を酌み交わすうちに、話はゾロとナミの馴れ初めの話になっていた。
自分自身の関係する男女の話をするのはナミにしては珍しい。
時折、茶化したりしつつも聞き所を押さえたウソップが相手だからか、今夜のナミは饒舌だった。
たまには惚気たい夜もあるのだろう。
「じゃあ、そうなるキッカケって結局何だったんだ?」
そんなの、とナミはとても綺麗に笑ってみせた。
「キス一つで十分だったのよ」
合わせた唇が信じられないくらい気持ちよくて、そのまま溺れた。
行動に言葉が追いつかない、そんなことがあるのをその時初めて知った。
「ハマっちゃう時ってそんなモンなのかもね」
少し照れたようなその顔はやはり綺麗で。
「ご馳走様」
酒の肴としては甘すぎるが、ナミのこんな表情を拝めたのだから悪くはない。
「んでさ、参考までに聞いとくけどよ。そのキスのきっかけは?」
ウソップの問いかけに、はた、とナミは考え込む。
天井を見つめ、記憶の糸を辿っていたナミはやがて、不穏な気配を漂わせ始める。
「ナ・・・・ナミ?」
「・・・・・思い出した」
ついさっきまでのお惚気顔はどこへやら、ギリギリと爪を噛みながらナミは声を絞り出した。
「"やらせろよ"だったわ」request
U to N. words:やらせろよ by 鳥さん