字書きさんに100のお題
女部屋へと続く扉はゾロの足元で乱暴に閉ざされ、その後に鍵のかかる音が残された。
「おい!」
ゾロはその場に胡坐をかき、若干の苛立ちを滲ませてぐしゃりと髪を掻き回した。
諍いのきっかけというのはいつも些細なことで、笑って済ませられそうなことではある。けれど、そこに至る過程でほんのちょっと選択を誤るとどうにもならなくなる。
最終的には謝った方が負け、という気にさせられるのだ。
「俺ァもう知らねェぞ!!」
最後通牒とばかりにゾロは閉じた扉に向けて怒鳴る。応答はない。
「分かったよ」
ダンと大きな音をさせてゾロは片足を立てる。そして、倉庫内は静けさに包まれた。
暫くの沈黙の後、カタンと鍵の外れる音がし、床と扉の間に隙間が開いた。
両手で扉を持ち上げ、ナミは目だけであたりをうかがう。誰も居ない。自分で締め出したのだとは分かっていても、そこにゾロが居ないことがまた腹立たしかった。
「何よ、あの根性なし!」
「誰が根性なしだ」
降ってきた声と共に、扉を持ち上げられてナミはキャアと驚きの声をあげた。
目を上げれば、背後から自分を覗き込んでいるゾロの姿がある。正確には覗き込んでニヤニヤ笑っている、だ。
「あ、あ、アンタいつから」
ゾロは目を白黒させているナミの腕を掴むと、軽々と女部屋から引き上げる。
「根性あんだろ?」
笑ってゾロは背後からナミを抱きすくめ、そこでようやくナミは我に返る。
「ちょっと!! そういや私、まだ怒っ――!!?」
ナミの抗議の途中で、ゾロはつい、と指を動かす。触れられた箇所に相応しい反応をナミの身体は示した。
抵抗をすればするほど、その身体は敏感になっていく。イヤだ、と呟く声は快楽の予感でもう濡れている。
部屋の鍵を開けさせるほどの忍耐は必要ない。
ナミの持つこの柔らかな鍵の開け方なら、もうこの身が熟知している。
赤く染まった耳朶に噛みつきながら、ゾロはゆっくりとその鍵穴に手を伸ばした。
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