字書きさんに100のお題


  84.言いかけた言葉 <ゾロナミ> Date:  
平穏な一日の後にも、激動の一日の後にも等しく夜は訪れる。

海軍大将とやりあった後、九死に一生を得た二人と、腕だの脚だのを凍らされた二人の手当で日暮れを迎えた。
休めと言われても頑なにそれを拒否したサンジが作った夕食をとると、各自その場を離れた。皆、言葉は少なかった。

予想通り、眠りは浅かった。
目を覚ましたナミは部屋を出て、空を見上げた。月の位置は大して変わっていない。
疲れているはずなのに、神経がいやに尖っていて休めそうにはなかった。
そのままナミは暫くの間、何か思案するようにじっと月を眺めていた。
やがて視線を下ろすと、キッチン下の階段に人影を見つけた。ナミは目を凝らす。
傍らに立てかけた刀が三本。ゾロだった。
「眠れない?」
そう言ってナミはゾロの二段ほど上に同じように腰を下ろした。
「あぁ」
俯いたままゾロは低く応じた。
少し疲れたようにも見える背中。
ナミはその背に、先程自らに問いかけていた言葉を投げかけてみた。
「ねぇ、どうする? もしも、この先ルフィがいなくなっちゃったら」
「・・・・・そうだな、俺は――」
そう言ったきりゾロの言葉は消えた。思考の海の中に静かに潜っていったようにナミには思えた。

ルフィがやられることがあったら。
間違いなく、その相手をやりに行くだろう。
殉じる、という訳ではない。仇討ち、と言うのには違和感がある。
もしかしたらケジメというのが一番近いかも知れない。
そうしなければそれ以上どこにも行けないような気がする。その先があるにせよ、ないにせよ。

ぼんやりとそんなことを考えていたゾロのもとに華奢な腕が降りてきた。
後ろから抱きしめるように回されたナミの腕。
「アンタが行くときにはついてってあげるからね」
ナミのその言葉に、ゾロは目を見開く。
「アンタ一人で行かせたら、ロクなことにならないんだから」
冗談めかした台詞で、けれど回された腕は微かに震えた。
ゾロは苦笑を浮かべ、それからナミの腕に頭を預けた。
「俺ァ、テメエのそういうとこが大嫌いのような気がする・・・」
誤魔化しがきかない。
どんな魔法を使うのか、自分の考えなど簡単に見透かされてしまう。
ナミはただ静かに笑い、それから「ありがとう」と言った。




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Z to N. words:大嫌いのような気がする・・・ by 春様

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