字書きさんに100のお題


  85.天井<ゾロナミ> Date:  
"所用"の為に潜り込んだ一室も華美ではないが質のよい造りだった。
広々とした寝台もしっかりとしたもので、先刻どれだけ暴れても軋む音一つあげなかった。
裸のまま肩を触れ合わせて一組の男女が天井を見上げていた。

「本当にお姫様だったのねあのコ」
「・・・信じてなかったのかよ」
低く笑うと揺れたゾロの肩がナミの肩をノックした。
「そういう訳じゃないけど」
唇を尖らせながらナミはくるりとうつぶせになり、両肘を立てて半身を起こした。
華奢な身体とシーツの間に豊かな乳房が実る。
ゾロはシーツの上で手を滑らせ、その柔らかさを楽しんだ。
ナミはくすぐったそうな笑顔を見せたが、それでもされるがままになり、戯れに与えられる強い刺激に時折切なげに目を細めた。
「だってあのコってばやたらと負けん気は強いし、向こう見ずでたまに口悪いし」
「おまけに意外に好戦的だしな」
そう言ってゾロは笑った。

「だけどここがあのコの育った場所なのね」
「風呂はでかいし、メシは豪華だし使いの人間もやたらといるな」
ゾロの言葉にニヤリと笑ってナミは続ける。
「おまけにベッドも頑丈で天井も高いわね」

しかしナミの笑顔は長くは続かなかった。憂い顔で呟く。
「やっぱり海賊にはならないかなぁ?」
「それはアイツが決めることだからな」
「やっぱりここにいた方があのコには幸せなんだろうな」
そうしてナミは小さな溜息を落とす。
「私だってあのコをし幸せにする自信あんだけどなぁ」
「嫁にでもする気かよ」
からかうような声音のゾロをナミは軽く睨む。
「悪い?」
「・・・・俺の立場がねぇな」

ナミは声をあげて笑うとゾロの腕を枕に再び仰向けになる。
「どっちに転んでも幸せなんてめったにある選択じゃないぜ」
そうね、とナミは小さく笑った。
それでも不安と期待がないまぜで泣きたい気持ちになってくる。
見上げた天井はあまりに高く、溜息すら届きそうになかった。

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