あいうえお44題


  こ : この道の先には <ゾロ+ルフィ> Date:  


打ち込まれた砲弾が地面に激突し、辺り一面に砂礫を撒き散らす。
舞い上がった砂煙を境として、二つの勢力が対峙していた。一方は、一勢力とみなすには余りにも人数が少なかったが。
海を背にした断崖に、二つの人影が見える。
群起する海兵達に立ち向かっているのは、たった二人の海賊だった。

血塗れの姿で三刀を構え、前方に立ち塞がる敵を睨みつけていたゾロが、ちらりと視線を動かした。
そのすぐ前には同じように酷い有様の背中が見える。赤味の増したシャツがじっとりとその背に張り付いているのが分かった。
「行くかァ? ゾロ」
雲霞の如き敵を前に、まるで散歩にでも出るような気安さでルフィが言うので、ゾロは思わず笑ってしまった。
「行くって、どこにだよ」
目の前には、どこまでも続く敵の姿。進むべき道すらも見えない。後ろは底が見えないほどの断崖である。
ゾロの言葉に、ルフィはそこで初めて振り返り、いつものように「ししし」と笑った。
その視線はゾロを見越して、海へと注がれている。
「海に決まってんだろ、海賊なんだからよ」
そうしてルフィは前を向き、両手を鳴らす。固めた拳が、全てを蹴散らして海へと戻ると語っていた。
「了解。船長」
きっと今、ルフィは笑っているのだろう。子供のような顔で。そんなことを思えば、ゾロの顔にも自然と笑みが浮かぶ。
「行くぞ! 迷子になんなよ、ゾロ!!」
「てめェこそな!」
弾けるように飛び出した麦わらを、ゾロが追う。
鳴り響く砲弾と、ぶつかり合う武器の音。そうして全ては白煙の向こうの出来事となった。



海賊の往く先、そこに必ず海はある。

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