あいうえお44題


  や : やがて結末のときは <ルフィ+ロビン> Date:  



太陽は水平線の彼方に沈み、空高くから降りてきた黒の帳が辺りを包み込みつつある。
夜の最も高い所と同じ髪の色をした少年は船首に腰を下ろし、暗い海を見ている。
夜の海と同じ髪をした女が静かな眼差しでその背を見つめていた。

「どうして私をここに置いてくれたの?」

落ち着いた声が夜風と共に流れた。

「責任とってって言ったの、お前だろうが」
「・・・・確かに」

ルフィはくるりと振り返ると、苦笑を浮かべた綺麗な顔を見て楽しげに笑った。

「あの時・・・・あなた聞いてたの? コブラ王との話」
探るような瞳を、ルフィはじっと見つめ、それから笑顔で首を傾げた。
「忘れた」
そう、と穏かに応じ、ロビンはそれ以上問うことはしなかった。

「生かしたのが罪だって、お前は言ったな」
「えぇ」
頷いたロビンを見て、ルフィは口元に笑みを残したまま、僅かに目を細めた。
だったら、と続いた声は、いつもとは違う低いもので、それはロビンに夜の海を思わせた。

「責任ならいくらでもとってやるから、俺がいいって言うまで死ぬことは許さねェぞ」

そう言い切った少年を見つめる漆黒の瞳に、一瞬の動揺が走った。
殺す、死ね、そんな言葉なら一切心を動かされたりしないというのに。
この船を、この少年を選んだことを悔いる気持ちが不意に芽生えた。
いずれ自分が自分でなくなってしまいそうな、それは先の見えない恐れにも似た思いだった。


「怖い人ね。あなた」
「そぉかァ?」

そんな風にいつも通りの口調でルフィが笑うので、ロビンは行く末を思うことを止め、微笑を返した。

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