あいうえお44題
お :おわりなんてなければ <ゾロ+ロビン> |
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巨大ガレオン船の落下から始まった一連の騒動が収まり、船はジャヤへとその航路を定めた。
到着までのひと時をロビンは、甲板で本を読んで過ごしていた。
その前をゾロが通り過ぎようとし、ふと足を止めた。何気なく目を落としたロビンの手元のページに、先程、セントブリス号から引き上げてきたものによく似た剣を見つけたからだった。
「そいつァさっきの船の――」
呟いたゾロを見上げ、ロビンはにこりと笑った。
「流石は剣士さんね。よく見てること」
そう言ってロビンは手にした分厚い本を持ち上げ、表紙をゾロに見せた。
「これは"南の海"の史書。ブリスのことをもう少し知っておくのもいいかと思って」
手元に本を戻すと、ロビンはゾロが目に留めた武具の項目に指を置いた。そこには、柄の形が独特の良く似た幾つもの剣の図が載っている。
「当時、この国ではこういう刀身の幅が広い剣がよく用いられていたみたいね。後に騎馬での戦いが主流になるとそういった直剣は廃れて、サーベルのような曲刀が用いられるようになったの」
ロビンは甲板に取り残された過去の遺物に目をやる。
「年代的に言って、もしかしたらあそこにあるのが最後に作られた剣の一つかも知れないわね」
どこか寂しげな口調のロビンの顔を、ゾロはちらりと窺う。静かな眼差しには過ぎ去った時代の遺物を慈しむような、そしてどこか寂しげな感情が見て取れた。
ゾロはロビンの顔から目を離し、その見つめる先を同じように見つめた。
それはゾロの目には、ただ単なる錆びた剣としか映らない。ゾロにとっては切れ味や、扱いやすさといったものにこそ剣の価値がある。
「邪魔したな」
そう残して立ち去ろうとしたゾロの耳に、ひそやかな声が届く。
「終わらないものなどない」
独り言のような呟きは続く。
「剣も、それを扱う人間も、それが属する国も、この星ですら―――」
振り返ったゾロの目を、ロビンはじっと見つめた。
「そんな風に考えている私にも、終わりなんかなければいいと思っているものがあるなんて言ったら、アナタは信じてくれるかしら?」
答えに窮したまま、ゾロはただじっとロビンの瞳を見つめ返す。
どれ位そうしていただろう。
「おーい! ロビン!! これ何だー?」
ガラクタの中に何か珍しいものを見つけたのか、ルフィが大声でロビンを呼ぶ。
「何かしら?」
ロビンは本を閉じて、立ち上がると真っ直ぐにルフィの元へと歩いてく。
その背を見送るゾロは、ロビンの問いに対する答えを持たない。けれど、ついさっきルフィを見ていたその瞳には、きちんと未来が映っていたように、ゾロには思えた。
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