*については裏書庫に続きがあります。
表書庫
■
SleepWalker* |
Date: 2003-09-26 (Fri) |
晴れた日は表での読書が最高。
少し強めの風が、日差しの強さをやわらげている。
今日の午後のドリンクはパイナップルアイスティー。
パインとミントの清涼感が私の気分もさっぱりさせてくれる。
運んできてくれたコックさんが、キッチンに入る前に一度こちらを振り向いた。
グラスを上げて微笑むと、相変わらずの微笑み返し。
―今日は10倍返し位かな―
と、次の瞬間、彼は「けっ」というような表情でキッチンへと入っていく。
・・・うーん、天気はいいし、風も気持ちいい、おいしい飲み物もあるし。
―言うことなしかな―
・・・くかーーーーっ
―いや、ある―
コックさんの「けっ」の原因。
私のデッキチェアの傍らで眠る男。
相も変わらず朝から寝まくってるこの男。
私がさりげなく傍にデッキチェアを引っ張ってきて座ったのにも気づきやしない。
―まぁ、いいか。傍にいれるんだし―
何て思ってしまう自分がいじましいわ、全く。
「・・・ナミ・・・」
隣から呼ぶ声。
え?奴が起きたっていうの?奇跡的!
何て振り向いたら―
・・・寝てた。
―でも、まぁ、寝言で名前呼ぶなんてかわいいトコもあるじゃない―
と何とはなしに観察していたところ―
どうも、動きが怪しい。
何となく腰が動いてるような・・・
何となく股間に違和感が・・・
「・・・ナミッ・・・」
間違いないっ!!
―何の夢見てんだっ、コイツはっ!!―
どうしてやろう、と考えてるとウソップの声。
この先の航路がどうのこうの、と言っている。
―ヤバイ、こっち来るっ―
「・・・ナミィ・・・・」
―あんたはその寝言と動きを止めろっ―
足先で奴の腰のあたりを突ついてみたけど効果まるでなし。
ウソップはどんどん近づいてくる。
「・・・ナミィ・・・」
いつもは、ろくすっぽ名前なんか呼ばないくせに・・・
このバカ、何かだんだん腹たってきた。
もー知らない、低エネルギーで大打撃のトコを攻撃してやるっ。
ごすっ・・・
「うぎっ」だか「うごっ」だか聞こえた気がするが、私は知らんぷりでウソップに予定航路の説明をする。
ウソップは、何故か体をくの字に曲げる剣豪を不思議そうな顔をして見ていたが、奴の
恐ろしい形相を見て声をかける気は失せたようだ。
それでは、私もこの辺で退散しましょ。
自室で本の続きを読んでいると、コックさんからディナーのご案内。
―奴のご機嫌はどうかな―
ちょっとびくびくしながらキッチンへ。
奴は、いたいた。
何となく睨まれてるような視線を感じるけど、無視無視。
何にも言ってこないところを見ると、奴も思い当たる節があるんだろう。
―少しは反省するように―
と私はその後もことさらに無視を決め込み・・・
夕食後、コックさんからのお酒のお誘いを断り、淹れてもらったコーヒーを片手に、
更に続きを読む。
―途中で止められなくなる程の本に出会えるってのも幸せよね―
などと考えていると・・・
ばたん...ドサッ...
―何の音・・・?―
不審に思いながらも私は、扉を開ける。
そこには大の字になって寝こける剣豪。
―・・・何やってんのコイツこんなところで―
もっかい股間を踏んずけてやろうかと思ってやめた。
使いモノにならなくなったら私も困る。
―さて、どうしましょうかね―
と、本を持ったまま出てきたことに気づく。
私はためらわずに持っていた本のカドを奴の額に食らわす。
1番硬いところでやらないと、本のほうが痛むに違いない。
ごげんっ
うっと顔をしかめる奴。あれ?起きない。
もう一発と振りかぶったところでパチリと目が開く。
ヤバ、とまんない。
顔面ヒット直前、奴に手首を掴まれて転がされる。
私の頭を片方の腕で守ってくれたのがせめてもの優しさか。
「いったいじゃないのよ、お尻うったっ」
「てめぇこそ何してくれてんだっ」
いってぇーと言いながら奴は起きあがり、額を擦っている。
私も何となく傍らに座り込んでみたりして。
「・・・で何してんの、あんた、こんなトコで」
「あぁ?見て分かんねぇのか、てめぇは、寝てたに決まってんだろ」
・・・・・・・・・・・
「ココで?」
「あぁ..ココで・・・・・!?」
・・・・・・・・・・・
「あれ?俺、自分の部屋に戻ったと・・・・???」
きょときょと辺りを見まわす奴。頭の上に10個位?が浮かんでるに違いない。
しかし・・・・
―あっきれた、あきれたっ、あきれかえった―
「自分の船ん中で迷子になる海賊なんてあんたくらいのもんだわね」
「迷子っていうな!!」
眼光鋭くすごんでみても威力ゼロだね。
何ていったって迷子なんだから。
思わず溜息が出てしまう。
まぁ、いいか。せっかく二人きりになれたことだし・・・
「何だかよくわかんないけど、せっかく来たんだから一杯やってく?」
―こういう偶然もいいかな―
何だか胸のあたりがほこほこする。
これもまた、ちょっとした幸せって感じかな。
何だか上機嫌で部屋へと降りていくナミを見つめるゾロ。
―迷子って言われた方がいいよな―
よっ、と立ち上がってゾロは苦笑する。
―俺のキャラじゃねぇだろ、お前の顔が見たくて来た・・・なんてよ―
終
[前頁]
[目次]
[次頁]