*については裏書庫に続きがあります。
表書庫
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2.枝の話 |
Date: 2003-09-26 (Fri) |
みかんの木の剪定の作業に入るナミ。一枝一枝、確認しながら不必要な部分を鋏で切り落としていく。
バッチンッ!!
ナミは足元に落ちた枝をつま先で払い、手元に視線を戻す。
・・・・と。
今まで枝だったスペースに突然現れた目とナミの目が合う。
― !!!? ―
目の上の枝を持ち上げると、その目の上には麦藁がのっている。
目の下の枝を払うと、その目の下ではみかんを咥えている。
一瞬、驚きを見せたナミだが、次の瞬間ルフィの頬を思いっきり掴んで引っ張り始める。
物も言わずに引っ張り続けるナミ。
限界まで伸びきったところで、ぱっと手を離す。
バッチーーンッッ !!!
自然の法則に従って、ルフィの頬は加速度をつけて持ち主の元へと戻る。
その勢いでバランスを崩したルフィは、これまた自然の法則に従って地面へと落下する。
何すんだよ、ナミぃ。びっくりすんじゃねぇかー」
立ち上がって、パンパンとズボンの尻を叩きながらルフィは文句を言っている。
「お・ど・ろ・い・た・の・は...こっちよっ !! 」
そんなルフィに一言一言念を押すようにナミは言葉を叩きつける。
ナミは、落ちたみかんを拾ってルフィに渡す。
「もうっ、ホラ用事済んだでしょ、あっち行って」
手をひらひらさせて、ルフィを追いたててみたが。
ぶんぶんと首をふるルフィ。
「ちゃんと別に用事があってきたんだぞ、俺」
何故か威張るルフィ。
―じゃあ、何でソレを優先させないのよ―
どうせ言っても無駄なので、思っただけで口にはしなかったが。
「コレ渡しに来たんだ」
ずいっと伸ばした手をナミの前で広げる。
と、その中にはまたしても鍵があった。ゾロのくれたそれとは少し形が異なるが。
「な、何かしらこれ、ルフィ?」
怪訝そうな顔をするナミと同じ位不思議そうな顔をしているルフィ。
「あー、言うなって言われてんだよ。皆に」
―みんな?口止め?―
「言うなって何を?教えてくれたら、もうちょっとみかんあげてもいいわよ。」
食べ物で釣ろうという算段だ。
「あー? よくわからねぇっ」
きっぱりと言いきるルフィ。
「はい、教えたぞ。みかんくれ、ナミ」
―ソレは"教えた"とは言わないのよ...ルフィ―
ルフィが差し出した手を、ナミは溜息をつきながら一旦下げる。
「ちょっと待ってよ、じゃあ、皆は何て言ってたの?」
辛抱強く聞くナミ。
「あぁ、俺に言ってもしょーがねーからとりあえず行って渡してこいって」
「じゃあ、あんたは何も分かんないまま来たのね?」
うん、と頷くルフィ。
がっくりと肩を落とすナミ。
―ダメだーっ、コイツから情報を取ろうとした私がバカだったわ―
ナミが溜息をこぼす直前に、あぁ、でもとルフィは話し始める。
「俺、嫌々来たわけじゃねぇからな、ナミ」
まっすぐにナミの目を見ながらルフィは続ける。
「何だかよくわかんねぇケド、ナミが大事なら..喜ばせたいなら行ってこいって」
だから来たんだぞ、と無邪気に笑うルフィに思わずナミもつられてしまう。
にこにこにこにこ...
状況は分からないままだが、何故か穏かな時間が流れる。
と、思い出したようにルフィが口を開く。
「そうだっ、あいつら言ってた。コレはナミの、誕っぶぶっっっ」
甲板から飛んできた鉛星がルフィの顔にめり込んでいる。
「わりぃーっ、ルフィ、手元が狂ったっ」
下からウソップの声が聞こえてくる。
朝から大砲の調整等と言って甲板で何やら作業を続けてるのだ。
―何で大砲の調整してて、鉛が飛んでくんのよ―
ナミが甲板を見下ろした瞬間。
「何すんだっ、てめぇっ」
怒鳴りながら飛び降りたルフィをウソップハンマーが襲う。
「何じゃねぇよ、ルフィ」
ウソップが声をひそめたため、そこから先はナミには聞こえない。
「案の定、余計なこと言うトコじゃないかよ、全く。ココでばれたら元もコもないんだって言うのに...」
「・・わりぃ...」
キッチンに続いて甲板でも戦いが始まるのかと、半ばうんざりと覚悟を決めていたナミの予想に反してその場は収まったようだ。
とばっちりを食ったはずのルフィが大人しくウソップの話を聞いている。
―何か...みんな今日はヘン―
そして、ナミの手元には2つ目の鍵が届いた。
ほんのりとみかんの香りを漂わせるルフィの鍵が。
続
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