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表書庫


  5.根っこの話 Date: 2003-09-26 (Fri) 


「いい加減にしろよー、お前らよー」
肩を落としながら、ウソップはうんざりと言う。
時は夜。場所は男部屋。タダでさえむさ苦しいこの部屋は、只今異様な熱気に包まれている。
ナミの誕生日を明日に控え、喧喧諤諤の作戦会議が繰り広げられているのだ。

議題その1「準備の間、いかにしてナミの足止めをするか」
提案その1。ナミを酔わせて寝かせておく→却下。
却下理由「あいつより酒が強いヤツがどこにいんだよ....」

提案その2。とにかくふん縛ってでも女部屋に閉じ込めておく→却下。
却下理由「誰がやるんだ?その役目...?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

仕方ねぇ、と溜息をこぼしながらウソップは話し始める。
「少し手間はかかるが、こういうのはどうだ?・・・・・・・・・・」
一同は真剣にウソップの説明を聞く。しかし、明らかに居眠りをしている模様の船長。
「・・・・・てな感じだ、やれるか?」
一同を見まわしつつ、ついでにルフィを殴って起こしてからウソップは同意を求める。
「まぁ、それなら気づかれずに準備出来るかもな」
反対意見が出なかった為、ウソップはやれやれ、と肩を揉みほぐしつつ話を続ける。
「じゃ、あとは役割決めるだけだな〜」
 



「いい加減にしろよー、お前らよー」
肩を落としながら、ウソップはうんざりと言う。
役割を決めるだけの筈なのだが、それが一向に決まらない。
何だかんだと理由を付けて、誰しもが「一番最初に鍵を渡す役」を譲らないのだ。
喧喧諤諤を通り越して、一触即発、取っ組み合い寸前の空気の中。
ルフィが突然のんびりとした声を出す。 
「何だかんだ言って、あれだなー」
「お前ら全員あいつのこと、すげー好きなんだなー」
その瞬間。全ての動きがピタリと止まる。
ルフィを覗く全員が、何となく顔を見合わせ、次の瞬間顔を真っ赤に染める。
「ばっ、バカなこと言ってんじゃねェっぞ、てめぇっ」
「あ、改めてそう言われると照れるなぁ」
「お、俺にはカヤって女が....」
「俺は、い、一応トナカイだし....」
一斉に話し出す4人をルフィは不思議そうに眺めている。
「違うのかよ?何慌ててんだ、お前らへんだなー」
言う方と言われる方がいつもとは全く逆なのだが、全員反論できないでいる。
・・・と。
「じゃあ、やっぱり俺が最初に渡すぞ。よくわかんねぇけどこれ渡せばナミ喜ぶんだろ? 俺はあいつのこと好きだからな」
「待て、コラっっ !!!」
残り全員にツッコまれるルフィ。そして更に続く不毛な議論。

「ダメだーーーーっ」
「俺達の間で話し合う、てトコにそもそも無理があんだよ」
「ここはやっぱり、男として...」
「あぁ、勝負でカタつけるしかねぇだろうよ」
「分かった、じゃあてめぇら皆オモテに出ろっ」

どやどやと部屋を出ていく男達。
そして甲板にて。
「いくぜっ !!」
「あぁ、てめぇら後悔すんじゃねぇぞっ !!!」

 じゃーんけーん、ポンっっっ !!!

 あーーいこーで、しょっっっ !!! 


作戦決行前日、男達の熱い戦いは夜更けまで続いたという。





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