少数お題集
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06.願い事を一つ <ヒナ+スモーカー> |
Date: 2008-03-19 |
ふてぶてしい表情を作った電伝虫が、面白くもなさそうに海の向こうからの声を伝えてきた。
「何の用だ?」
「・・・・・同期からの昇進祝いくらい素直に拝聴したらいかが? スモーカー准将?」
「別にお前に祝ってもらう言われはねェだろうが。切るぞ」
「あら、まるで自分だけの力で偉くなったような言い草。驚きね、ヒナ吃驚」
「何が言いてェ」
「政府のお偉方からの辞令を蹴ったり、勝手に受け持ちの島を離れたり、聞こえない振りで命令無視したり、上官に向かって賊をぶん投げたり・・・・・もっと言いましょうか?」
「涙でも流して感謝すればいいか?」
「そんなの見たら、私、一生笑って暮らせるわね、ヒナ大爆笑」
「勝手に笑ってろ・・・・大体、祝いだって言うなら酒か葉巻かもう少し骨のある海賊の情報でも持ってくるんだな」
「最近は随分と精勤ね。そんなに上に行きたいのなら、あの時素直に上がっていればいいものを。馬鹿ね、本当に馬鹿な男」
「随分な言われようだが、こいつァ本当に祝いの電話なのか?」
「そうね。そう言えば、たしぎはいる? どうせなら感謝なんて言葉も知らない男より、たしぎにお祝いを言うべきね。ヒナ失敗」
「大体、お前、電話寄越してからこっち、一言も祝いの言葉なんて言ってねェだろうが」
「それでたしぎは?」
「・・・・・・・今は哨戒に出てる」
「変わりはない?」
「あぁ、トロ臭いのも相変わらずだ」
「そう、可愛らしいのも相変わらずなのね。あの子は私もお気に入りなんだからキチンと仕込んでおいて頂戴」
「お前に何の関係が?」
「あら、いずれ私の後釜にとも思ってるんだけど」
「誰がてめェみたいなあばずれに渡すか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・グランドライン広しと言えど、この私にそんな口を利くのはアナタだけよ。スモーカー君」
「そいつァ貴重な人材だ。大事にしろよ」
「大事にしたいとこだけど、その貴重な人材とやらはすぐに暴走するから困るのよ。自滅だけではもう済まない位置にいるのだから。自分が指揮官だということを忘れないで頂戴」
「あぁ、精々肝に銘じとく」
「そうそう。それでアナタがヘマやらかして死んだりしたら、たしぎは私に譲るってちゃんと周囲に言っておいて頂戴、ヒナお願い」
「・・・・やかましい!」
低く唸って電伝虫は沈黙する。
これだけ言っておけば大丈夫かしらね。
あの男が一度手にしたものを易々と手放す筈がない。
たしぎが居るなら、きっと地獄の底からでも這い上がってくるでしょうから、ヒナ確信。
置土産のように残された電伝虫の苦々しい表情を前に、ヒナはにこりと微笑んだ。
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