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  ブラッディオレンジ Date: 2003-09-26 (Fri) 

"ブラッディオレンジ"

そんな蠱惑的な名を持つ
血のように朱も鮮やかな
香も血の如く芳しい
こちらのソースは如何ですか?






目の前できつく噛み締められた唇。
そこへ触れようとした長い指は虚しく空をきった。

伸ばされた指先を拒否するように、ナミは大きく俯く。
いつもは自然と目を惹かれる艶やかな赤い唇。
それが、今は噛み締められた箇所から白く変色している。

乱れた前髪の隙間から覗く瞳。
爛々と輝く瞳は鋭く、眼前の男を睨みつけている。
触れなば斬らん、といった抜き身の刀のような雰囲気を纏っているナミ。

「・・・・どうしたの?」
それでも男は怯むでもなく伸ばした指の行き先を変える。
ナミの細い顎に触れた指先。
俯いたままのナミの顔を、ついと上向かせる。
そのままゆっくりと指の腹で顎から首のラインを撫で擦る。

気を立てている猫でもあやすように。何度も何度も。
「・・・どうした、ですって」
優しく、微笑みながら自分を見つめている眼前の男―サンジを見据えたままナミは口を開く。
「それはこっちの台詞よっ、どうしてこんなっ・・・・」
やや強張った口調で一息にそう言うとナミはぎこちない動きで身を捩った。
それでも状況は何一つ変わらず。

キッチンのシンク際に追いつめられるように立つナミ。
その前に立ちはだかるサンジは片手をシンクの縁に、そしてもう片手をナミの頤にあてている。

―どうしてこんな、どうしてこんな、どうしてこんな―
虚しい疑問符だけがナミの脳裏を駆け巡る。

日付も間もなく変わろうという時間。
ナミがキッチンに来たことになどさしたる理由はなかった。

その時ナミはそう思っていた。

そしてサンジは笑ったのだ。いつものように。
予想以上の収穫をあげた蜜柑。それをソースにするのだと、そう言っていた。

"昼にやると作った端からなくなっちまうから"
そんなことを言ってサンジはまた笑った。

そして・・・・
手伝おうか―などと殊勝なことを口走ったのにもさしたる意味はなかった。
その時ナミはやはりそう思っていた。

そしてやはりサンジは笑ってそれまでかけていたエプロンからするりと身を抜くと、隣にやってきたナミに頭からそれを被せたのだった。

サンジの指先がナミの首のラインに沿って滑る。
エプロンの首紐に抑えつけられた髪をゆっくり梳かしていく。

―それがいけなかったんだろうか―
その優しい感触に、甘い蜜柑の香りと苦い煙草の煙に一瞬酔ってしまったことが。
それとも・・・・

泡立器を握る長くて綺麗な指に、時に繊細に時に力強く動く指先に見惚れてしまったことが。
サンジの視線に気づいたナミが見た微笑は、その時既に変質していた。


「・・・・貴女が欲しがるからですよ」
顔に張りついている微笑。
サンジはよく笑う。特に女性に対しては。

それでも、
その笑みの下には何の感情も読み取れない時がある。
意味のない微笑。

そんな時のこの男は、
いつもは身に潜ませている底の知れぬ恐ろしさを垣間見せる。

「私が一体何をっ!!」
首筋を擽るサンジの指から逃れようとナミは再び身を捩る。
ささやかな抵抗。
両の手首を後手に拘束されているナミにできる唯一の。

エプロンの紐が蛇のように細い手首に幾重にも巻きついている。
本来なら胴にまわされる白い紐。
それが食い込むナミの肌は尚更に白い。

「分からない?」
「分かるもんですか」

ナミの答えにサンジは軽く肩を竦める。
それからナミの細い腰に両手を添え、軽々とその身体をシンク横の調理台へと乗せる。
きつい表情のまま、ナミは身を強張らせる。
そんなナミに構うことなく、サンジは笑みを浮かべたまま片手をナミのスカートの中へ潜り込ませる。
肌の上を滑るサンジの手。
ギクリとするナミは必死で足を閉じている。

敏感な内腿をサンジは弄る。
先程ナミの前で見せたように強弱の動きでもって。

「・・・・んっ」
ナミの溢したほんの僅かな吐息と、一瞬の力の緩んだ隙をサンジは逃さなかった。

更に奥へと、秘められた場所へとその手を伸ばす。
薄い布越しに湧き出している水を、サンジは確かに捕えた。

「・・・・ほら、これが貴女の躰が欲しがってる証拠」
益々艶やかな、そして邪な笑みをサンジは見せつけた。

「っ...ん....」
声を漏らすまいと、堪えるその声は逆にいやらしく響く。

サンジは焦らすように浅く内壁を擦りつけている。
その指を奥へと引き込もうと動く無数の襞。

「中、すげぇよ、ナミさん。
俺、指ちぎられそう、すげぇ引っ張られてく」

揶揄するようにサンジは言葉を続ける。
「もっと欲しいんだろ? ナミさん。奥まで届くように」

飲み込まれそうになる快楽に抗い何度も首を振るナミ。
その体内からゆっくりと指が引き抜かれていく。

「・・・あっ...は...」
安堵とも不満ともとれる吐息が零れる。

その傍らでカチリと金属の鳴る音が聞こえる。
熟んだナミの瞳に映ったのは。

「や、サンジくっ...」
挿し込まれた無機物の冷たさに、熱くなっていた下半身が強張る。
それは先程までサンジが扱っていた調理器具だった。

「あっ、いやぁぁぁぁぁっ...」
鉄製の柄がずぶりと身の内にとり込まれていくのと共に、堪えきれなくなった声がナミの口からあがる。

ナミの乱れるその様に愉悦の表情を浮かべつつ、サンジはその棒を軽く傾ける。
浅く潜り込んだ先端がナミの秘唇の底を抉る。

「・・・っ、う...」
軽い痛痒感に僅かに身を震わせるナミの元に。

とろり

鮮やかな朱の液体が柄を伝ってナミの秘唇へと注がれていく。
押し広げられた口の周囲が朱に染まっていく。


ナミとは逆の端を持つサンジの手にも零れたソースが朱い線を作っている。

「・・・あぁ、勿体無い」
ボソリとそう呟くとサンジは先端についたソースを自らの手に絡めていく。

自分の目の前にその手をかざし、軽く手首を折り曲げ舐めとっていく。
余裕に満ちた、勝者の瞳で。

その瞳をナミの瞳に固定したまま。そして薄く笑いながら。
ゆっくりと、見せつけるように舌を這わせていく。

ナミはそんなサンジから目を離せない。
そして凄絶な、残酷なまでのこの男の色気に疼く躰をとめることもできないまま。


喉の奥で笑いながらサンジは、棒を更に奥まで挿し入れ、無造作に引き抜く。
思わず顔を仰け反らせるナミの耳元に口づけるようにしてサンジは囁く。

「ねぇ、ナミさん。感じてるんだろ?
ほら、中がすげぇ疼いてるのが伝わってくるぜ、こっから」
そう言うと、サンジは手にした棒で秘唇の入口をゆっくりと掻き回す。
表面に付着していた赤い液が広げられた端からナミの内部へとり込まれていく。
棒が動くその度に体液とソースが混ざり合い粘着質の音を立てる。

「なぁ、 ナミさん・・・・」
いつもとは違う低い声が―

「舐めて欲しいだろ? この舌で・・・」
優しい言葉ではなく恥辱を煽る言葉が―

ぐちょり
これまで聞いたこともないような、卑猥な水音が―

「・・・だったらもっと足、広げて」
ナミを耳からも犯していく。

先程までナミの内部を抉っていた棒は、いまや調理台の角に追いやられている。
代わりに受け入れようとしているものは。

ナミはサンジに言われるがままに、調理台の上で両の足を大きく開いている。
捲れ上がったスカート、最奥までもが顕わになった太腿。
ナミにとって救いなのは、エプロンが己の浅ましい姿を隠してくれていて、自分の目には入らないということだ。

それは、サンジには何の意味もないことではあるが。
サンジはゆっくりと床に膝をつくと、ナミの視界から消えた。

何をされるのか見えないことで、ナミの感覚は研ぎ澄まされていく。
サンジは真っ赤に彩られた秘唇に口づける。
軽く唇が触れる、その感触にさえもナミの躰はピクリと反応を示す。

サンジは喉の奥で低く笑うと赤く潤む陰へと舌を滑らす。

「あぁ...」
吐息と共にビクリと跳ね上がる白く美しい腿。
それを抑えつけながらサンジは更に深く内へと舌を挿し入れる。

器具の硬質な刺激とは全く異なる、温かく柔らかな刺激。
目に見えない、躰への直接の刺激。
ぬるぬると内側を舐めとられていく、音と感覚にナミは身悶えた。

指で、器具で刺激を与えられ続けていたナミの内部。
絶頂を兆しながらも、その都度達することを許されなかった躰は感度を増し続け、今またサンジの舌使いによって絶頂の際へと導かれつつある。

「んぁっ...は...も、う...私、わ、た..」
ナミの口から発せられる言葉には既に意味などなく。
秘唇からはとめどもなく甘い体液を溢しながら。

ガタガタとナミの体全体が震え出す。

あと僅かの刺激で―
もう一度その舌を挿し入れられるだけで快楽の果てに身を委ねられるのに―

サンジはそれを許さなかった。
ナミの下半身から唇を離すと、サンジはおもむろに身を起こす。

唇についた赤い液体を笑いながら舐めとっていく。
「ナミさん、最高の出来。このソース。
 どんなスパイスも敵わねぇな、コイツには・・・・」

そう言ってサンジはあっさりと立ち上がる。
焦らすだけ焦らして、続きをする様子は見受けられない。

「ず、るい...サンジ...つぅ...」
潤んだ瞳で自分を責めるナミの言葉をサンジは自らの唇で遮った。
一瞬前まで、さんざ秘唇を嬲っていた舌が今度は口腔を蹂躙していく。

サンジの片手はナミの頤に。
上気したナミの顔を引き寄せると、更に深く唇づける。

サンジの片手はナミの手首に。
自ら結んだ戒めを、サンジはゆっくりとといていく。

僅かな息遣いと紐の擦れる音。
ナミの両手を解放すると同時にサンジは唇をも離し、ナミの耳元で囁く。

「これで貴女の望みどおりに。後は好きなようにしたらいい。
 ここから出て行くのも行かないのも貴女しだいですから」

ナミは自由になった手首を擦りながらサンジを見つめている。
もう分かっているのだ。
気づかぬ振りをしようと試みて失敗したことを。
気づかぬ振りなど無駄だと思い知らされたことを。
己の欲するものが何かを。

この男は見つけ出す。
肉体の奥底にある浅ましき欲望の種を。

見つけ出されてしまう。
どんなに上手く隠しても。

それを瞬きの間に育て、刈り取り、料理するのだ。

恍惚の内に、自分の好みの味に。


ナミはゆっくり瞳を伏せると、サンジの下半身へと手を伸ばす。

サンジは動かない。
ただ黙ってナミのしようとしていることを見つめている。

緩慢な動きではあるが、ナミは着実にサンジの衣服を剥いでいく。
そして顕わになったサンジ自身の元へ、ナミはその身を堕としていった。
ナミの体がじりじりと調理台の際へと動く。
サンジの先端がナミのとば口に触れ、何の抵抗もなく侵入していく。

「あ...あぁぁぁぁぁっっ」
サンジが入っていくにつれ、ぐちゃりという音と共に内部に残されていた赤い液体が溢れ出てくる。
「・・・っつ...」
その所為かいつもよりきつい内部に思わずサンジも肩を揺らし、大きく息を吐く。
ナミの内部はどろどろに溶けて、熱い。
そしてナミ自身も頬を上気させ、蕩けるような目つきでサンジを待っている。

今以上に深く貫かれることを。

―ずるいのは俺じゃない、貴女だ―
サンジが大きく突き入れるとナミは背を反らせ、一層高い声で鳴く。

―俺が主導権を握るれるのはここまで。
  あとは俺が貴女に夢中になっちまうんだから―






赤い、赤い、血のような
狂おしい程にむせかえる血のような


そんなソースは如何ですか?


作り手をも虜にする。



艶やかで淫らなこの―




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