+裏書庫+


  揺りかご Date: 2007-05-13 
*オモテNOVEL 44題『連綿と続く思いを』続編



寂寞の思い尽きぬ夜は、静かに更けゆく。


サンジが腰掛けているソファに、ナミは左の膝を乗せた。身動き一つせずに見つめてくる瞳を見返しながら、ナミはサンジの下肢を跨ぐようにしてもう一方の膝をソファに乗せる。
膝立ちのまま、右手をサンジの肩にかけ、ナミはサンジの首筋に顔を埋めるようにしてその身を預けた。柔らかな重みを受け止めた男の頬に、ナミは己の頬を寄せる。
僅かに浮いた無精髭に肌をちくちくと掻かれるを気にもせず、ナミはまるで猫の子のように幾度も頬をすり寄せた。
くすぐったそうにサンジが目を細めれば、その拍子に、零れずにいた涙が目尻から落ち、ナミの頬をも濡らした。
一筋の涙を共有した後、ナミは身を起こすとサンジの顔を正面から見つめた。笑みの形をとった唇が、金の髪の隙間から覗く目の際に近づいていく。唇で涙を拭うと、ナミは涙で濡れ光る唇を男の唇にそっと押し当てた。
ゆっくりと、だがやがて深く唇を重ね、二人は離れた。
至近距離にあるナミの唇から、しっとりと濡れた吐息が漏れ、サンジの唇をくすぐる。
「どうにもしょっぱいキスで失礼」
上目遣いでバツの悪そうに、冗談めかした囁きで苦笑するサンジにつられたように、ナミは顔を綻ばせ、コツンとその額をサンジの額にあてた。
混ざり合った金とオレンジの髪はやがて離れる。膝立ちのまま、ナミは身体を左に傾けると、夜着の裾に手を入れ、するりと下着を引き下ろす。
下着から片足を抜いたナミは再びサンジに向き直り、同じ手をサンジの下肢に差し向けた。
ナミは幾分苦労しながら片手でズボンの前を開ける。敢えてされるがままにしていたサンジがピクリと眉を顰めた。ナミの細い指が下着の中に忍び入っていた。
これから起こるであろうことを予期し、半ば目覚めつつあった器官に絡んだ指は、やんわりと促すようにその表面を滑った。
腰の辺りから緩やかな快感がじわりと全身に広がり、サンジは切なげに目を細める。
熱を帯びた息を一つ吐き、サンジは人差指を口元に運ぶと、指先をペロリと舐め、その手をナミの夜着の裾に潜らせた。
柔らかな茂みを掻き分けた指先が、温かな肉の中に沈み、探るように亀裂の上部へと移動した。
「んっ」
密やかに息づく突起に触れられ、ナミは、瞬間、ふるりと腰を揺らした。
突起にあてがった指先を繊細な力加減で回転させ、サンジは指先に絡めた唾液を丁寧に塗りこめていく。
サンジの肩に額を預けて瞳を閉じ、ナミはサンジの柔らかな動きに合わせて、すっかりと硬くなった幹をさすり続けた。
それはどこまでも静かな愛撫の交歓だった。
最初に喉を鳴らして以降、ナミは声をあげていない。その代わりに浅い吐息を零し続けていた。
肩に感じる重みと、震える細い髪。耳に届く甘く艶かしい息遣い。その全てがサンジの胸を熱くする。
与え、与えられる優しい快感。焦れるような思いと、いつまでもこのままで居たいという相反する思いを抱きながら二人はその手を動かし続けた。

やがて、顔を上げたナミの切なげな表情に、サンジは心得たように微笑を返す。それを見たナミは二本の指でサンジの幹を支えながら、ゆっくりと腰を沈めていった。
透明な露を滲ませた男の先端が、しっとりと濡れた女の中に音もなく吸い込まれていく。
目を伏せたナミは、そのまま大きく顔を反らした。僅かに開いた唇からは声の代わりに長い溜息が零れた。
ナミは時間をかけてサンジを飲み込んでいく。
失くしたものを探し求めるようにサンジはナミの奥深くに入り込み、ナミはもう何も失うまいとするかのようにしっかりとサンジを包み込む。
ぴたりと繋がったまま、サンジはナミの腰にそっと両手を回した。
同じ形に欠けた心を持つ二人は、ゆっくりと前後に互いの身体を揺らしていく。
その姿はまるで、泣き止まぬ幼子をあやす揺りかごのようにも見えた。





[前頁]  [目次]  [次頁]


- Press HTML -