+裏書庫+


  Island Lospass Date: 2003-09-26 (Fri) 


ぱさり・・・

頬を撫でた乾いた感触に、ナミはぱちりと目を開ける。

―葉っぱか―
どこからはぐれてきたのか、舞込んだ1枚の葉。
ベッドから身を起こすと、ナミは吹き抜けの窓に目をやる。

朱に、紅、橙、紫...
この世のものではないような美しい、禍禍しささえ感じさせる空の色。
それは、朝焼けなのか、夕焼けなのか...

全てが混沌として、整合をなくす。


―どうして私たちここにいるんだろう―


「いい島だな...」
背中から、のそりと動く気配と、低い声。
それはナミの中で、愛と夢の天秤を揺らし続ける男の声。

「寝てばっかりいるくせに、よく言うわ」
ナミは振り向かずに笑う。
それはゾロの中にある、愛と野望の秤を狂わせ続ける女の声。

「そうか...」
少し笑いを含んだ声でゾロは一言だけ返す。



沈黙―その時間は長かったのだろうか。
静寂―その時間は短かったのだろうか。





「・・なぁ、船、降りてここで暮らすか?」
「な..何言ってんのよ...突然。何で?」
「理由が要るか?」


腕を引き、ゾロはナミをベッドに倒す。
うつ伏せになったナミの背をゾロの広い背中が覆い隠す。
片腕で自分の体を支え、片腕をナミの細い腰に回す。

「絶対、俺の顔見んなよ」
そのまま、ぴたりとナミの耳に口を寄せ、ゾロは呟く。

「・・・るからだ、お前を...」
「え....?」

それ以上聞き返すナミの言葉は、ゾロの指でかき消される。
秘唇に差し込まれようとする愛しい男の指。


―この男に触れられるだけで、吐息を感じるだけで、堕ちてしまいそうになる―
ゾロは指先に水の存在を感じる。

―愛だけに生きる道に―
ゾロは躊躇わずに、その節くれだった指をナミの中に埋め込む。

「..っく...うぅぅぅんっ...」
指が挿れられるたびに仰け反る背を、ゾロは唇で抑える。
ゾロの唇が動くにつれ、ナミの背が徐々に朱に染まっていく。
残された跡が、空の色をうつすようにナミの背を飾っていく。

「っねぇ...あんた...さっき何て言..たの?」
きれぎれの息の中ナミは問いかける。
「言って...もう一度...」

ゾロは答えない。
ナミの中から指を抜き、代わりに熱く昂ぶる怒張をあてがう。
「..っや...あぁぁぁぁんっっっ..」
抉られ、捲り上げられる。
すさまじい快感の中でも、何故かその声ははっきりと聞こえた。

「愛してる...ナミ...」






獣のように何度も突き上げながら、うめくようにゾロは言う。

「っく..愛してる。愛してる。愛してる...何回言っても足りねぇよ」
「あぁぁっ...わっ...私を....?」

何かを振りきるかのように、狂ったようにゾロは動く。
「ああっ...俺の野望も、未来も...全て砕けちまっても構わねぇ。
 この手にお前さえ残ればっ...」
「っはぁっ...愛してるわ」

何かを切り捨てるかのように、ナミは声を振り絞る。

「誰よりも、何よりも..あぁぁっ..この世にあんただけが残ってくれたら...
 私はそれだけで生きていけるっ...」
「俺で...いいのかっ?..っつ...ナミっ..」

躰全体に広がる熱を、震えを、これ以上抑えることはできない。

「ナミっ...ナミ...愛してるぜ...」
「..あんたを、愛してるっ..ゾロ、ゾロっっ..あっ..あぁぁぁぁっっっ...」





そして世界は暗転し―



まどろみの中、ナミの耳に声が届く。それは自分を呼んでいるようで・・・

―誰...?いや、呼ばないで...ここにずっといたいの―



夢現の中でゾロは人影を見る。それは自分を招いているようで・・・

―誰だ...?やめろ、呼ぶな...俺はもう、そっちにはいかねぇんだ―



そして世界は始まる―







「・・・お前、何泣いてんだ...?」
先に起きていたゾロの指が、ナミの頬を撫でる。
その指がいつもよりやさしく感じるのは、気の所為だろうか。

「何か..夢見てたみたい...」
まだぼんやりとしたまま、ナミは無意識のうちに言葉を紡ぐ。

「よく覚えてないけど...すごく切なくて胸が痛くなるような..」


―幸せな夢を―

「・・そうか...」

少し寂しげな声でそれだけ言うと、ゾロはナミを抱き寄せた。
その広い胸に包まれる刹那、ナミは気がついてしまった。



ゾロの頬にも同じものが残されていたことを...





Lospass島―
Lost Past―



過去を..未来を..時を失う島にて....



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