+裏書庫+


  Covers Date: 2003-09-26 (Fri) 






体を重ねた次の日は・・・
女の爪の色は常より濃度を増す


-Cover1-

「...っぅ...くっ....」

部屋に小さく響いた声。
搾り出すような、男の溜息。

その声が耳に届く前に、私の躰は既に絶頂に達し、意識は半ば
飛びかけていた。

そんな私の意識を覚醒させるのは膣内に感じる奴の熱い息吹。

私の上に奴がどさりと崩れてくる。
私の頭の脇に肘をついて、かろうじて躰を支えている。

一番に躰が近づく至福の瞬間。


熱い息に熱い躰。


私達は、繋がったまましばらくその熱を共有し...



「..行くぜ...」

着衣を整えるとそれだけ言って奴は出ていく。いつものことだ。
私は急に冷えた躰に身震いする。これもいつものことだ。


―私の中から出ていくときに、あいつが私の熱まで持ってっちゃう
んだろうな―


去りゆく背中を見つめながら、そんな愚にもつかない考えが浮かぶ。


―行かないでなんて言わないわよ。私―
―だって知ってるもの、あんたに何より大事な野望があることを―
―そして、私にも何にも代え難い夢があることも―


だから、あの一瞬の熱があれば私は大丈夫....



そして私は、いつものようにネイルに手を伸ばす。

呪文のように一つの言葉を呟きながら、爪を塗る。

体を合わせた次の日は・・・
男の刀は常よりも手入れが入念で。


-Cover2-

「..んっ..やっ...っあぁぁぁぁっっ...」

部屋に高く、細く響いた声。
儚く消え入りそうな、女の嬌声。

背を反らして逃げようとする女の躰を、俺は抑えつけた。
そうしないと消えちまいそうな、そんな気がした。

力の抜けたあいつの中は、それでも燃えるように熱く、締めつける。

躰よりも先に頭が痺れて、自分を支えきれない。
こんなに熱くなっちまうのは、この女が初めてだ。

そして、それは何度抱き合っても変わらない。


熱い息に熱い躰。


俺はその熱を手放し難かった...



「..またね...」


俺の去り際に、必ずあいつはそう言う。
さっきまでの熱はどこに行ったのか。やけに躰が冷える。


―イっちまう時に、俺の熱があいつに移っちまうのか...
構わねぇさ... それ位しか俺はあいつにやれねぇからな―


そんなことを考えた自分に思わず苦笑する。


―ずっと俺の傍にいろ、何て言えねぇから―
―あいつには一生を賭けるに足る夢がある―
―そして、俺には命より重い野望がある― 


だから、ほんの一時のぬくもりで俺は満足だから....



そして俺は、努めて無心で、はたいた打粉を拭い、油を塗る。

伝えることのできない言葉と共に、刀を鞘に納める。




Covers・・・・


体を重ねた次の日は・・・
女の爪の色は常より濃度を増す。


体を合わせた次の日は・・・
男の刀は常よりも手入れが入念で。


爪と刀―
そこに覆い隠された言葉は、ただ一つ―




―愛してる―



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