体を重ねた次の日は・・・ 女の爪の色は常より濃度を増す
-Cover1-
「...っぅ...くっ....」
部屋に小さく響いた声。 搾り出すような、男の溜息。
その声が耳に届く前に、私の躰は既に絶頂に達し、意識は半ば 飛びかけていた。
そんな私の意識を覚醒させるのは膣内に感じる奴の熱い息吹。
私の上に奴がどさりと崩れてくる。 私の頭の脇に肘をついて、かろうじて躰を支えている。
一番に躰が近づく至福の瞬間。
熱い息に熱い躰。
私達は、繋がったまましばらくその熱を共有し...
「..行くぜ...」
着衣を整えるとそれだけ言って奴は出ていく。いつものことだ。 私は急に冷えた躰に身震いする。これもいつものことだ。
―私の中から出ていくときに、あいつが私の熱まで持ってっちゃう んだろうな―
去りゆく背中を見つめながら、そんな愚にもつかない考えが浮かぶ。
―行かないでなんて言わないわよ。私― ―だって知ってるもの、あんたに何より大事な野望があることを― ―そして、私にも何にも代え難い夢があることも―
だから、あの一瞬の熱があれば私は大丈夫....
そして私は、いつものようにネイルに手を伸ばす。
呪文のように一つの言葉を呟きながら、爪を塗る。 |
体を合わせた次の日は・・・ 男の刀は常よりも手入れが入念で。
-Cover2-
「..んっ..やっ...っあぁぁぁぁっっ...」
部屋に高く、細く響いた声。 儚く消え入りそうな、女の嬌声。
背を反らして逃げようとする女の躰を、俺は抑えつけた。 そうしないと消えちまいそうな、そんな気がした。
力の抜けたあいつの中は、それでも燃えるように熱く、締めつける。
躰よりも先に頭が痺れて、自分を支えきれない。 こんなに熱くなっちまうのは、この女が初めてだ。
そして、それは何度抱き合っても変わらない。
熱い息に熱い躰。
俺はその熱を手放し難かった...
「..またね...」
俺の去り際に、必ずあいつはそう言う。 さっきまでの熱はどこに行ったのか。やけに躰が冷える。
―イっちまう時に、俺の熱があいつに移っちまうのか... 構わねぇさ... それ位しか俺はあいつにやれねぇからな―
そんなことを考えた自分に思わず苦笑する。
―ずっと俺の傍にいろ、何て言えねぇから― ―あいつには一生を賭けるに足る夢がある― ―そして、俺には命より重い野望がある―
だから、ほんの一時のぬくもりで俺は満足だから....
そして俺は、努めて無心で、はたいた打粉を拭い、油を塗る。
伝えることのできない言葉と共に、刀を鞘に納める。
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