+裏書庫+
■
リモート(下) |
Date: 2004/12/12 |
返答はない。
ただ、匂い立つような気配が腕にはめた子電伝虫から広がる。
「ナミ?」
呼び声はいっそ優しげで、低く、そして深くナミを揺さぶる。
ナミが短く息を吸い、吐いたのが分かった。
「どうした? ナミ」
ゾロは殊更にナミの名を呼ぶ。
「やめて!」
ナミは何かを振り払うように大きく頭を振る。
「そんな風に呼ばないでよ!」
ナミは立ったまま、片手で自身を抱きしめる。まるで自らを戒めるかのように。
胸を覆うように回した腕に、胸の先端があたる。ナミの意図とは無関係に、そこは既に固くなり始めている。
「・・・ナミ」
夜に聞くゾロの声は甘い。
繋がり合う時だけしか聞くことのできないその声。
身体はその声を知っている。
ナミは何度も頭を振る。
「そんな声で呼ばれたら、」
身体が勝手に夜を思い出してしまう。
その先を言葉にできないナミの元に、ゾロの低い笑い声が届く。
ゾロはよく知っていた。自分の声がナミを縛ることができるということを。
ナミはふらり、と後退る。
粗末な台に設置されている電伝虫。そのコードがナミの動きにつれて延びた。
「今、何してる? ナミ?」
抱きしめた格好のまま、胸の脇で固く握り締めていた拳が開いていく。
「い・・・ま・・・」
花が開くように一本、そしてまた一本とナミの指が開いていく。
すっかり手を開くと、何かに操られているようにそろそろと指は移動を始める。
動くにつれ、指先に感じる柔らかさは増す。
「胸に、手、あたってる」
ゾロの笑いを含んだ息が闇に溶ける。
「ちゃんと手ぇ動かしてみろよ」
その声を跳ね返す術をナミは持たなかった。
「・・・・・・・・・・・ん」
暫し躊躇った後、消え入りそうな声で、だがナミは確かに肯定の意を伝えた。
手のひらに余る豊かな胸を掴む手に、ナミはゆっくりと力を込める。
やわやわと弾力のある乳房とは逆に、指の付根にあたっている先端は、その輪郭を顕わにしようとしている。
「どうだ?」
「・・・固く・・・なって、きてる」
「もっと固くさせてみろよ」
ナミは言われるままに、二本の指で乳首を挟む。
すっかりと立ち上がったそこを挟む指に、ナミは力を入れる。
「ん・・・あぁ・・・」
むず痒く、甘い痛みが下腹部へと落ちていく。
胸に視線を落とせば、挟んだ指の合間から乳首の先端が顔を覗かせている。
大きく膨らんだそこを目の当たりにし、ナミは俯く。けれど、感じたのは恥ずかしさだけではない。身体の奥に火のついた欲望が、確実に存在した。
その証拠に、ゾロに言われるまでもなく、ナミの指は動いていく。
挟んだ乳首を扱くように何度も指を擦りつける。
「うっ・・・ん・・・・っ」
擦りあげる度に快感は強まっていく。
未だ残る羞恥心が、その事をゾロに悟らせまいとナミに唇を噛ませる。
それでも隠し切れない息遣いを耳にし、ゾロは目を細めた。
「固くなったろ?」
「・・・・ん」
ナミは胸元に目をやる。
色づき、立ち上がった乳首の頭が、指を動かすにつれ、見え隠れする。
いつも、あの男にこんな風にされているのか、と思えば欲望は更に煽られていく。
「指、舐めてみろよ」
ナミは言われるままに人差し指を口に運ぶ。
舌は自然に指の先端をなぞっていく。
ちゅくちゅくと指を舐る音が漏れ聞こえた。
舌で指先を弄ぶナミに、ゾロは次の指示を送る。
「それで先っぽ弄ってみな」
唾液に濡れた指先を、ナミはすっかりと尖った先端にあてる。
濡れた感触に一瞬ひやりとしながら、先端を捏ねるようにくるくると指先を遊ばせる。
「あぁ・・・」
自然と声が漏れる。
唾液が潤滑材となり、指先は抵抗なく滑る。まるで―
「アンタに、舐められてるみたい」
言葉にすれば、ますます本当に舐められているような感覚にとらわれる。
やがて唾液が乾き、指先の動きが鈍ると、ナミは不満げな声を漏らし、再び指先を口に含む。
指先は忙しなく、ナミの口と胸の間を行き来する。
「・・・つっ!?」
その最中、ますます硬くそして敏感になった乳首にナミの爪が偶然にぶつかる。
それまでじわじわと甘い痺れを楽しんでいたナミは、突然の鋭い痛みに顔を顰める。
「どうした?」
「爪が、ひっかかって・・・」
そうか、とゾロは口の端を僅かに持ち上げる。
「そこもっと、強く掻けよ」
「・・・え?」
意を酌みかねてナミは聞き返す。
「爪で、引っ掻いてみな」
聞こえてくる声はこともなげで、ナミは軽く目を見開く。
「や、よ。痛いもの」
「・・・いいから」
ナミは目を瞑り、意を決したように乳首にあてた指を爪立たせる。
そのまま押し込めば、先端は立ち上がった形のまま柔らかな胸の中に沈み、ナミに刺される痛みを刻む。
「や・・・イ、タ・・・」
けれども、身体はこの痛みを知っていた。
それがやがて痛み以外のものに変わっていくことも。
「・・・あ・・・う・・・」
押し当てた爪先を強く引き、湧き上がった感覚にナミは首を逸らした。
漏れ出る声はもはや悲鳴ではない。
低く笑う声が聞こえる。
「少しキツクされる方がいいんだろ?」
もはやゾロはナミ以上にナミの身体を知っている。その快楽を引き出す術も。
「そうだろ?」
揶揄を込めた口調でゾロは問いかける。
「・・・で、まだ感じてねぇって言い張るか?」
ナミはもはや反論することもできず、唇を噛み締めたまま俯く。
「濡れて、ねぇのか?」
ゾロの言葉にナミの手は胸元から離れる。
そろそろと自身の身体に指を下ろしていく。
臍の窪みを抜け、なだらかな下腹部へ。そして、指の先に触れるささやかな茂み。
その茂みの僅かに下、現れた裂け目にナミの指は躊躇いがちに進入していく。
指先に温もりと、そして既に周囲にまで溢れ出している蜜を感じた。
「・・・濡れ、てる」
クプ・・・
あてた指先を、ほんの僅か押し込んだだけで水音が湧き立つ。
指先に想像以上の熱を感じ、ナミは自分が今いかに興奮しているかを自覚させられた。
「指、挿れてんのかよ?」
「・・・・っん・・・うん」
ゾロの問いにナミは小さく頷く。
ゾロが自分の姿を想像していると思えば、ナミの中の欲望の火は益々煽られていく。
羞恥心や理性を霞ませる程の恍惚とした思いをナミは抱いていた。
「上の方、掻いてみな」
「う・・・え・・・?」
ナミは己の内側に指の腹をあてる。
「ざらざら、してる」
触れた感触を口にすれば、ゾロが笑うように息を吐いた。
ぬめるその壁に押し当てた指をナミは強く引いた。
「んぅっ、 ・・・あぁんっ」
思うとおりの反応を示すナミに、ゾロは声を出さずに笑った。
「・・・んっ、んっ、んっ・・・」
ナミは、何度もその一点を擦り続ける。
「そこ攻めると泣いてよがるからな、てめぇは」
嬲るようなゾロの声で快感は更に深まる。膝が震え、腰が重く痺れてくる。
「あ・・・・あ・・」
「てめぇでヤってもいいみてぇだな」
低く笑う声が続く。
やがてナミはガクリと床に膝をつく。伸びきったコードの先で、電伝虫が重たそうに揺れた。
身体の奥が悲鳴をあげている。
これでは足りない、と。もっと熱くて長くて太いものが欲しい、と。
あの声の主の、いつも感じているあの刺激が欲しい、と訴えている。
ナミの手から送話機が落ちた。
間を空けず、ゴトリ、と硬い音がゾロの耳に届く。
訝しげに首を傾げたゾロは、手首に耳を寄せ、そして目を見開いた。
そこから聞こえてきたのは、ナミの身体が奏でる水音だった。
腿の合間に落ちた送話機のことは最早気にならなかった。それが何をゾロに伝えるのかも。
ナミは両膝を大きく開き、前のめりになる。
左肩で上半身を支え、高く尻をつきあげていた。
獣のような格好で、だがその両手は股の間で蠢いている。
片手で広げた入口に、できる限り深く指を射し込む。
その指が、一本から二本へと増えていく。
より深くを求めて、ナミの手首が何度もうねる動きをした。
指の先が身の内の壁を擦り、また別の指が更に先へと進む。
その度に、水と外気が混ざり合い、グシュグシュといやらしい音をたて、粘る液体が細い指の合間に何本もの糸を絡めた。
浅く息を吐く音の合間に響く、甘く切ない声。
ゾロは声をかけることもできずに、ナミの身体が発する音に囚われていた。
やがて、ね、と熱に浮かされたような掠れた声で、ナミは訴える。
「足りない・・・届かないのっ」
ゾロは小さく舌打ちする。聞こえてくる呼び声は、尚も切なさを増していく。
「ゾロッ、ねぇ、ゾロのが欲しいよぅ」
ゾロは悔しげに唇を噛んだ。
ちょっとした暇つぶしのつもりで仕掛けた筈だった。ナミをからかって、いい声の一つや二つ聞ければ、と。
ここまでのめり込むとは思わなかった。
実のところ、より苦しいのはゾロの方だった。
ナミの声や、粘る水音から痴態を思い浮かべ、身体は痛いほど反応しているのに、それを放つことができない。
声だけで触れることができない。それがこんなにも辛いことだとは思わなかった。
仕掛けた罠に嵌ったのは自分の方だったか。
「くっそ、 ぶち込みてぇっ!」
持て余す熱に、心底忌々しげな呻き声をゾロはあげる。
甘くゾロを呼ぶ声は、いまだ絶えることなく続いている。
「そんな声で誘うんじゃねぇよ、畜生」
いっそここで抜いてしまおうか、そんな事を考えるまでにゾロも追い詰められていた。
その時、ゾロの前方、暗い通りにぼんやりとした灯りが届いた。
足音から察するに人数は三人。ターゲットであるよう、ゾロは願った。
果たして、やってきた三人の中に見覚えのある顔があった。両脇に灯りを持った男を従えた男の顔は、昼間ナミに散々叩き込まれた顔だった。
ありがてぇ。
ゾロは手首を口元に寄せ、小声でナミに命じる。
「今すぐ行くから、そのままで待ってろ」
それから小さく笑むと冗談めかして付け加える。
「勝手にイクんじゃねぇぞ」
今、まさに前を通り過ぎようとする三人に目を向け、それからゾロは己の股間に目をやり、未だ治まらない昂りに苦笑する。
―もうちょっとだけ待ってろよ
ゾロは自身を軽く二度ほど叩く。不平を言うようにピクリと反応を返した分身に更に苦笑する。
―すぐにたらふく喰わしてやっから
「ちょっと待て。お前ら」
通り過ぎた三つの背にゾロは声をかける。
「何だ? てめぇは?」
振り向き、ゾロの姿を見とめ、目を眇める男達にゾロは不敵な笑みを向ける。
「時間が惜しいんでな。自己紹介も説明も無し、だ」
言いざまに抜刀し、ゾロは男達の元へと突進した。
建てつけのよくなさそうなドアにノックを二回。
応答はない。だが、確かにその向こうに蠢くものの気配がする。
ドアに口を寄せ、ゾロは抑えた声で呼びかける。
「俺だ。残念ながら手ぶらだがな」
瞬殺してきた相手はエターナルポースを持ってはいなかった。
「・・・・開いてるわ」
ややあって聞こえてきたナミの声に、ゾロは静かにドアを開ける。案の定、耳障りな音をたてるそのドアにゾロは顔を顰めた。
だが、目の前に現れた光景に、ゾロの頬がふ、とゆるむ。
「いい格好だな」
後ろ手にドアを閉め、鍵をかける。
闇の中に白い裸身。
オレンジの髪は乱れ、汗でか頬に張りついている。
ペタリと床に座り込んだナミの、片手は乳房を歪め、もう一方の手の先は秘所に埋もれて見えない。
「ゾロ・・・・ゾロぉ」
ゆっくりと近づいてくるゾロの腰元に、ナミはそれまで乳房を掴んでいた手を伸ばす。
「んな必要ねぇ」
ナミは自身を勃たせようとしていることに気づき、ゾロは頬をゆがめるとナミの手首をとる。
力任せに引き上げ、バランスを崩しかけたナミの身体を半ば強引に後ろ向きにする。
円やかな尻の下、太腿の内側を撫ぜれば、そこはナミ自身が掻き出したものでしっとりと濡れている。
ゾロは無遠慮な手つきで、その手を進める。
「・・・・んぅっ!」
太い指がナミの中に潜り込と、指先は中の感触を確かめるように円を描いた。
乱暴に掻き回す指の隙間から、愛液がぬるぬると吐き出されていく。
「ちゃんと言ったこと守ってたみてぇだな」
言いつけの通り、達することなく張り詰めたままの状態で保たれたその身体に触れ、ゾロは満足げに笑った。
すぐに指を引き抜くと、ぬめる液体に包まれたその指をペロリと舐める。
電波などでは伝わらない、ナミの匂いと味だ。
直接の刺激に下半身が疼く。最早、待ち切れないと騒ぎ続ける分身をゾロはナミにあてがう。
触れただけで中に引き込まれそうになるほど、その入口はぬかるんでいる。
ナミもまた待ちきれないのか、身悶えるように尻を揺らす。
その勢いでゾロの先端が埋まり、染み出た液体で竿を濡らした。
「ん、あぁぁっ!!・・・・・く、ぅっ!」
そこから一息に突かれ、高い悲鳴をあげかけたナミは、場所を思い出し、慌てて唇を噛む。
それでも焦がれ続けた快感は抑えることができない。
波打つように何度も背をそらし、頭を振る。闇の中に汗ばんだ髪が舞う。
電伝虫が置かれている台に両手をつき、ナミは崩れそうになる身体を辛うじて支えている。
激しく突き上げられ、作りの悪い台はガタガタと揺れた。
その時、電伝虫が揺れながら着信を知らせた。
肉を打つ音と荒い息遣いの中で着信音が鳴り続ける。
「・・鳴ってるぜ、出ろよ」
ニヤリと笑うゾロは、そう言いながらも腰を休める気配はない。
ゾロの動きに翻弄されたまま、ナミは台から手を離すことができない。
ナミは弱々しく首を振り、喘ぎ声の中辛うじて声を押し出す。
「無・・・理・・・・・ん、あぁぁぁっ!」
更に深く突き入れられ、息も絶え絶えなナミの後ろから手を伸ばし、ゾロは送話機を手に取る。
「ナミっさ〜〜〜んv 任務完了。手に入れましたよ〜、エターナルポース!」
途端に騒々しい浮かれ声が部屋に響き渡る。
「向かってくる野郎共をバッタバッタと! えへへ、ご褒美はキッスでお願―」
「・・・・うるせぇよ、アホコック」
苦々しげなゾロの声に、サンジの声がぴたりと止まった。構わずゾロは一方的に話を続ける。
「こっちは十分、いや、十五分で船に向かう。てめぇはルフィ拾って先に船行け」
サンジの表情を伝えるように、電伝虫が目を見開く。
「何でてめぇがナミさんで俺がルフィなんだ・・・っつーか、何やってんだてめぇそこでぇ!?」
半ば逆上に近い問いかけに、ゾロは人の悪い笑みを浮かべ、言い放つ。
「野暮用だ」
通話を切り、乱暴に送話機を投げ出すと、空いた両手でナミの胸を掴む。
柔らかな乳房を掴み、硬くなったその先を弄べば、ナミの中は敏感に反応する。
なぁ、とゾロはナミの耳元で問う。
「電話でヤルのとどっちがいい?」
身体中でゾロを感じながら、ナミは小さく笑う。
「・・・・・くっ」
瞬間、強く締め付けられ、堪らずに呻き声をあげたゾロは苦く笑った。
「聞く必要ある? そんなこと」
「だろうな」
繋がるのなら、声よりも身体で。
欠片ではとても足りない。求めるのはその存在全て。
終
[前頁]
[目次]
[次頁]