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  オーラル(下) Date: 2005-10-01 
ナミの肩に無造作にバスタオルを掛けると、ゾロは浴室から出て行った。
限りなく真白に近くなっていた意思は、引き寄せられるようにゾロを追おうとした。けれど身体がそれに反した。一歩を踏み出した途端、ナミの足は縺れた。柔らかなクッションを不意に踏みつけたように。
ナミは浴室の壁に背を預け、滴を落とす髪をタオルでぐいと拭う。タオルの隙間に垣間見えたその顔には苦笑が浮かんでいた。

軽く身体を拭い、バスタオルを身体に巻きつけてから浴室を出ると、ベッドの傍らに立つゾロの姿があった。
濡れたシャツを巻くり上げ、脱ごうとしているところだった。
引き締まった腰から広い背中、そして硬く張り詰めた両肩が顕わになっていく。
拭き取れなかった滴が一筋、その背を流れていくのを目にして、ナミは不意にそれを舐め取ってしまいたいという欲望に駆られた。
語らずとも女は寄ってくると言った台詞に嘘はないのだろう。
いやらしい身体。
裸の上半身などこれまで数え切れない程見ているというのに、この時、ナミは初めてそう思った。

「何してんだ?」
口の端に薄く笑みを浮かべてナミを見、ゾロは湿ったズボンをそのままにベッドに腰を下ろした。
ゾロが動けば、ベッドは軋んだ音と共に必要以上に大きく凹む。不快そうに顔を顰めながら、ゾロはベッドの背もたれに上半身を預け、もう一度ナミを見た。
「来いよ」
ゆっくりとした足取りでナミはゾロの元へと近づく。
ベッドの縁に片膝を乗せた途端、強く手を引かれ、ナミは身体のバランスを崩した。
「なっ!?」
小さな悲鳴が上がり、身体に巻きつけていたバスタオルがゾロの腹の上に落ちた。
身を隠すもの一つ持たず自分の上に跨るナミを見て、ゾロはニヤと笑うと、落ちたバスタオルを放り投げた。

「どこ、しゃぶって欲しいんだ? 出せよ」
そう言ってゾロは舌なめずりするように唇を舐めてみせた。
どこを与えようか。肉食獣の瞳に見つめられ、ナミは身体の内側深くからゾクゾクと粟立つのを感じた。
ナミはそろそろと腰を上げ、ゾロの肩に両手を乗せた。
ゾロの口元にナミの乳房がある。ゾロは少し笑ったらしい。微かな息がナミの乳房を撫ぜた。
「んっ!!」
ゾロの舌先が乳首の先端を突くと、軽く瞑ったナミの瞼がビクリと震えた。
舌の上で何度も乳首を転がしながら、ゾロは視線を上げ、ナミの反応を楽しんでいる。顰められた眉。伏せられた長い睫毛はゾロが舌を動かすたびに頼りなげに揺れ動く。羞恥心からか負けん気からかは分からないが、声を殺しているように見受けられるが、それでも時たま堪えきれない声を漏らす口元にも男心をそそられる。
崩して、乱して、滅茶苦茶にしてやりたい。
いつの頃からか、気がつけば心の奥底に隠し持っていた欲望は、今や御しがたい程に膨れ上がっていた。
その思いのままにゾロはナミの乳房を貪っていた。乳房の一方を手のひらで弄び、もう一方に噛り付く。痛々しいほどに腫れ上がった乳首は、もはやどんなささやかな刺激にも敏感に反応を示す。
ゾロの唇の中で擦られ、吸われる度にナミの息が上がっていく。
やがてゾロが唇を離した。胸の先端から唾液が滴り落ち、ナミの腿へと落ちた。
荒い息遣いを頭上に感じながら、ゾロは再び唇を開く。今度は舌は出さない。尖りきった乳首に犬歯を当てがい、硬く、けれど弾力のあるそこに噛み付いた。
「くぅぅぅぅっ!!」
食いしばる唇から声を漏らし、ナミは過ぎた快感から逃れるようとするように背を反らした。
「何だ? もう終わりか?」
からかう口調で口元を拭うゾロを、ナミはきつい瞳で見つめ返した。
勝気な瞳は、しかし、快感で潤んでいる。その光をゾロは綺麗だと思った。
「まだよ」
そう言ってナミはゾロの身体を沈めるように、肩に置いた手に力を込める。その意を察したゾロは自ら、浅く背をもたれさせた格好をとった。
先程と同じように、ナミはゾロに身体を差し出す。けれど、ゾロの唇は今度はナミの股の傍にあった。
ゾロの太い指が二本、茂みの下に潜り込み、おもむろに秘唇を暴いた。
熱のこもっていたそこが、急に外気に晒されて冷やりとする。ナミは思わず身震いをした。
先にペニスで確かめていた秘唇を、ゾロは今度は目で確かめている。
「凄ェな」
何気ない風で触れてきた指先はクリトリスを撫ぜた。
「――――――!!?」
言葉にならない衝撃に息をつめたナミに構わず、ゾロはそれきり触れようとはせずに言葉を続けた。
「何にもしなくても、しゃぶれる位になってるぜ。テメェのココ」
その言葉で、ナミの頬に一瞬で朱がさす。その直後、ゾロの頭に拳骨が叩き込まれた。
「無駄口ばっかり叩いてるとヤらせないわよ」
真赤な顔で、それでも言い返してくるのが可笑しかった。
「へいへい」
ニヤリと笑い、そして次の瞬間、ゾロはナミの秘唇に唇を押し当てていた。
ナミの身体が大きく跳ねた。それを許さず、ゾロは片手をナミの腰に回す。二度、三度、ヴァギナの周辺を舐めるとすぐ、舌の動きと共に水音が聞こえるようになった。
「っ、・・・・・くぅっ!!」
ナミは唇を噛み締め、嫌々をするように何度も頭を振る。支えを求めて伸ばした両手は、ベッドの背もたれをきつく握り締めた。
声、出さねェな。
ゾロは不意にクリトリスに唇をあて、きつくそこを吸い上げた。
「あぁぁっ!!」
はっきりとそれと分かる喘ぎ声が反らした喉を通って弾けた。
クリトリスを吸い込んだまま、ゾロは声を出さずに笑う。
傷一つない滑らかな表面を、舌のざらつく部分でこそぐように撫でつければ、ナミの腰がガクガクと震える。上半身を支える二本の腕と、その合間にある豊かな乳房が艶かしく揺れ動く。
うわ言のように何事かを呟くナミにゾロは顔を向けた。「も・・・・ダメ。・・・声、出して・・・イイ? ゾロっ、あぁんっ!!」
言い終わらない内に舐め上げられ、ナミは大きく喘いだ。その声を聞いて、ゾロは満足げに笑う。
「好きなだけ出せよ。んなトコで遠慮することもねェだろ?」

箍が外れてしまったように、もう声は止まらなかった。
「んっ、あぁ・・・・イィ・・・そこ、凄い・・・っ!!」
ゾロの舌に合わせるかのように、ナミは鳴き続ける。触れるだけの刺激には短く、秘唇を満遍なく舐めれば、歌うように長い声を上げた。
ヴァギナからはトロトロと愛液が流れ続け、ゾロの唾液と混ざり合い、腿を伝い、ゾロの身体にも流れていく。
ゾロはクリトリスに口づけたまま、中指をヴァギナの中へと浸した。くちゅり、と粘る水音と共に一層、愛液が溢れ出し、既にある流れへと混ざっていった。
よく熟れたといった感触の体内をゆっくりとかき回しながら、クリトリスを刺激すると、幾らもしないうちにナミの嬌声に切迫した響きが混ざるようになった。「あ、あぁ、あぁぁっ!!」
下腹部が熱く、そしてそこだけが身体から切り離されてしまうかのような浮遊感をナミは感じていた。
それが何の前触れであるかも分かっていた。
後ほんの数秒、続けられたら達してしまう。
快楽の終着点が目の前に現れたその時、ゾロの唇が、そして指も秘唇から離れた。
「・・・・え、あ?」
呆然としたナミをゾロが下から見上げていた。
「一人でイく気かよ?」
ゾロはナミの腰を両手で掴むと、軽々と持ち上げ、自分の腹の上に置いた。
「俺は、まだしゃぶってもらってねェぜ」
「だからって!!」
ナミは身悶えするように自分の身体を抱きしめた。酷い酷い、と身体も心も焦れている。
「憎ったらしい男!」
人の悪い笑みを浮かべるゾロを睨みつけ、ナミはくるりと身を反転させる。
下着ごとズボンを引き下げれば、弾けるような勢いでペニスが飛び出してくる。その太い幹に手のひらを添え、ナミは大きく口を開いた。

ペニスを先端からすっぽりと口に含み、ゆっくりと引き上げる。つるりとした亀頭に舌を這わせ、先端に浮いた露を舐め取るとほんの少し苦い男の味がした。
何度が舐めるうちに唾液が幹を伝って落ち、扱く手の動きを滑らかにしていく。
右手で幹を扱きながら、指先を裏側に張った筋に当てる。同時に先端を刺激すれば、ゾロはビクリと腰を震わせて呻いた。
ぴちゃぴちゃと舐める音が響く中、ゾロはナミの腰を引き寄せた。
「ケツ、上げろよ」
ゾロの股間に顔を埋めたまま、ナミはゾロの前に高く腰を上げた。
「ひ、うっ!!」
ヴァギナに舌を入れられ、ナミは思わずペニスから唇を離した。
「乾いちまったら後で困るだろう?」

舐めては溢れてくる液体を飲み込む。そんな互いを食む音がしばらく続いた後、ゾロが口を開いた。
「ちょい、待て・・・・っ」
ゾロの制止に、ちゅぽん、と音をたててナミの唇が離れた。
「もう挿れてェんだけど」
何となく言い辛そうなゾロにナミは可愛らしくも意地の悪い笑顔を見せた。
「あら? 先に一人でイったって私は構わないわよ」
『私は』の部分を強調して、再び咥えようとするナミのヴァギナに、ゾロは前触れもなく指を突っ込む。
「きゃあん!?」
「てめェだってモノ欲しそうに口開いてるじゃねェかよ」
笑いながら片肘をついて起き上がると、ゾロはサイドテーブルを探り、備え付けのコンドームの袋を取り出した。
袋の端を噛んで、片手で開封するゾロをナミはじっと見ていた。その様が妙にエロティックで胸が騒いだ。
なぁ、とペニスにゴムを被せながらゾロが語りかける。
「先に謝っとくわ。悪ィな」
何のことかと顔を上げた次の瞬間には押し倒されていた。
手首を強くベッドに押し付けられ、身動きもとれない。見上げた先にゾロの瞳がある。
その瞳が近づいたかと思うと、急に息がつまった。

「あっ、・・・・あ・・・」
ナミの体内が一瞬の内にゾロで満たされていた。
一気に根元までを押し込み、ゾロは一旦動きを止めた。ナミの肩に額をつけ、荒い息を落とした。それからゆっくりと起こした顔には苦笑が張り付いていた。
「クソ、やっぱりあんま持ちそうにねェな」
そう言ってゾロは腰を前後に振る。やがてその動きは激しさを増し、ゾロの息がみるみる内に上がっていく。
手首の動きを封じられて組み敷かれ、ただ揺すられるばかりのナミの姿を見ると、まるで無理矢理に犯しているような気分がした。
そして、そんな考えを抱いた瞬間、ゾロは激しく射精していた。
「うっ、く」
ナミの中で全てを吐き出してしまうとゾロはペニスを引き抜き、ゴムを外す。決して手触りのよくないティッシュでペニスを拭うとその中にゴムを入れて放り投げた。

一つ大きな息を吐き、ゾロはナミに目をやる。
「・・・・怒ってんのか?」
その声音が恐る恐るといった風だったので、ナミは軽く拭きだし、身を起こした。
「別に怒っちゃいないけど」
胡坐をかくゾロの足元に近づく。やや硬度を失って、それでもまだ天を向いているペニスにナミは口づけた。
ゾロの匂いが仄かに残る先端を舐めれば、それはすぐに元の硬度を取り戻した。
「怒っちゃいねェが満足はしてねェって訳だな」
ナミは顔を上げ、にっこりと微笑んだ。
「まぁね」
苦笑を浮かべるゾロは、再びサイドテーブルに手を伸ばした。指先でコンドームの在りかを探るが、一向に手に触れない。
身を乗り出し、その辺をかき回すゾロの手と表情が凍りついた。
「・・・・もうねェぞ。ゴム」
ナミは驚いたように目を見張り、ゾロは思わず頭を抱えた。
「一個ってどんなケチり方だ、おい」
あまりと言えばあまりの事態に、ナミはゾロの足元に突っ伏し、肩を揺らして笑っている。
「・・・・笑い事じゃねェぞ。・・・・・・・なぁ」
「何?」
笑いすぎで浮かんだ涙を指先で拭いながらナミは顔を上げた。
「お前、今日ヤベェ日か?」
ナミは宙を見上げ、日付を計算して首を振る。
「大丈夫なはずだけど・・・・アンタ、まさか、ちょっと!?」
思わず身を引いて逃げようとするナミを、ゾロは背後からベッドに押し付けた。華奢な背に圧し掛かるようにして押さえ、それからベッドとナミの下腹部の合間に腕を入れ、心持ち腰をあげさせる。
「や、ゾロ、待っ・・・・!!?」
形のいい尻の下、ヴァギナはまだ十分に濡れている。剥き出しのペニスの先に温かく濡れた肉を感じた。浴室でほんの一時踏み入れた入口。
今度はナミの制止を聞かず、ゾロはその中に自身を埋没させた。
「あ・・・ぁ、ゾロ・・・ダ、メ・・・抜い、て・・・・」
切なげに呻いて、ナミは逃れるように手を伸ばした。
ナミの懇願に対し、ゾロはナミの下腹部に潜り込ませていた手を下にずらした。
今まさに貫いている場所のほんの僅か上にある突起。そこもまた濡れていた。
「あぁぁぁぁんっ!?」
ゾロの指先がそこを刺激すると、ナミの中がぎゅうと締まった。ナミの伸ばした指先が震えながらシーツを掴む。

「抜いて、いいのかよ?」
クリトリスを捏ね回しながらゾロはゆっくりとペニスを引き抜いていく。
「あ・・・や、待、って」
一度奥の奥まで貫かれた身体は、その快感を覚えている。今、こうして抜かれようとしていることを既にナミの身体は拒否していた。
「だろ?」
掠れた声は熱く、甘くナミの耳を嬲る。
全て抜けてしまうギリギリのところで、ゾロは動きを止め、それから一呼吸置いて再びナミを深く貫いた。

それにしても、と浅い呼吸を繰り返しながらゾロは思う。
薄いゴムの有り無しで、こんなに違うものか。
最初に挿れた時も、あっという間に夢中になってしまったナミのヴァギナは、今、より一層の快楽をゾロに与えている。
無数の襞が形作る複雑な内部。その襞の一枚一枚が意思を持っているかのようにゾロに絡み付いてくるのが分かった。

「てめェ、アソコに何飼ってやがるんだ?」
忌々しげに呟くと、ゾロは抽送を開始した。
抜いて、挿れる。それだけで眩暈がするような快感に押し流されていく。
ナミの口からは喘ぐ声が絶えることなく、ヴァギナからは壊れてしまったのではないかと思えるほどの愛液が二つの身体を濡らしていく。
グチュグチュと音をたて、交じり合う体と息遣い。それが徐々に一つの方向に向かっていく。

「・・・凄・・・ね、こんなの、初めて・・・頭、オカシクなりそ」
「俺も、だ・・・・ナミ」
切なげに名を呼ぶその声にナミの身体が反応した。更にきつくなった中をゾロのペニスが擦りあげながら侵入してくる。
「あぁ・・・イ、きそう、もっと呼んで、名前、呼んで!?」
「あぁ、俺ももうやべェ・・・・っ、ナミっ、出すぞ、ナミっ・・・っ!!」
ナミの中から抜けた直後、ペニスの先端は震えながらナミの腰に二度目の精を放った。



「夢なんかよりずっとよかったでしょ?」
ゾロはベッドに伸びている。その傍らに座ったナミが笑いながら問うた。
「まぁな」
天井を見つめながらゾロは答える。
「もう私以外の女とスル気なくなったでしょ?」
「まぁな」
答えてからゾロはギョッとする。あまりにも何気ない問い方だったので、思わず乗せられてしまったようだ。
「てめェはどうだったんだよ?」
くすくす笑っていたナミは、ゾロを見て柔らかに笑む。
「今日だけじゃ分かんないかも」
それから内緒話をするようにゾロに顔を近づけた。
「分かるまで付き合ってくれる?」
ゾロの唇に自分の唇を重ね、そう言えばキスをするのはこれが初めてだと気づき、唇を合わせたままナミは笑う。

帰りにこの街のコンドームを買い占めていこうか、ねぇ?



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