+裏書庫+
■
遊戯(上) |
Date: 2003-09-26 (Fri) |
籠目 籠目
籠の中の鳥は いついつ出やる
夜明けの晩に――――
扉は重く軋む。
昼には気にもならないその音がやけに耳に障り、ナミは顔を顰めた。
暗がりの中、尚暗く、墨で塗りつぶしたような人影が見える。
置いてある資材の上に腰をかけている。
恐らくはこちらを見ているのだろう。痛い程の視線をナミは感じた。
「ル・・・フィ?」
か細い問いかけに答えはない。
音もなく、その足元にぽうと淡く火が灯る。
闇に慣れた目にはその僅かな光さえ、烈火の如く瞳を焼く。
ナミは思わず片手で目を覆い、瞳を閉じる。
瞼に焼き付けられた影から眩暈がするほど強い視線を感じる。
「ルフィ―?」
ピチャ・・・ペチャ・・・
耳に入ってきたのは言葉ではなく、濡れた音。時折何かを啜り上げるような音が続く。
食する音では、断じてない。その音を自分は知っている。
ナミはゆっくりと目にあてた覆いを取る。
目が合う。
真っ直ぐにナミを見つめるルフィの口元には、すらり伸びた指を持つ手がある。
ルフィはその手首を持ち、まるで獣のように、その親指の下、肉の柔らかな部分を咥えている。
そして、その手には手首より下がなかった。
「―ひっ!」
余りに異様な光景に堪らず一歩あとづさるナミを見、瞳はニヤと笑う。
音のないその笑みに反応するかのように、その手はルフィの口元を離れる。
代わりに長い指が艶かしく揺れ、戯れるように少年の顎を、頬を撫ぜる。
その内の一本が、唇をなぞり始める。
ルフィは笑みを深くすると、その指に舌を這わせだした。
ピチャリ・・・
部屋の中に再び響く水音。
ナミの瞳は目の前の光景を映さない。ただ淫らな場面のみが浮かんでは消える。
きつい程に巻きつき舌を絡めとる。
時に焦らすように乳首を撫ぜる。
突然硬化し、襞をこじ開ける。
ナミの背は僅かに身を竦ませる。
―イヤだ―
理性は警鐘を鳴らす。
あの唇に愛されているのは少なくとも自分ではない。
―では何を。では誰を―
苦いものが胸に込み上げる。
答えなどとうに分かっている。
分離された手首。あんな真似ができるのはこの船には一人しかいない。
―逃げないと―
だが本能は。
その音の愛撫を受け入れてしまっている、既に。
呆然と立ち尽くすナミもとに、くすくすと低い笑い声が届く。
ルフィではない。
ルフィはいまだ自分に纏わりついてくる指を舐め続けている。
ルフィが腰を下ろしている資材、恐らくは詰まれた木材、の後ろから白い手が覗く。
それはナミの目の前でルフィと戯れている手と全く同じものだった。
くすくすくすくす。
続いて現れたのは心底楽しげに微笑む顔。
女は資材の上に両腕をつき、上半身を預ける。
「どうしたの?」
ことの異常さなど気にもとめない風でロビンは小首を傾げる。
怒りの所為か、不快の所為かナミは声を出すことができない。
「こっちにいらっしゃい」
固まってしまったかのような身体に喝をいれ、ナミは一歩後ずさる。
扉の方へと身を捩った瞬間、伸びてきたルフィの腕に腰を巻かれる。
気がつけばナミはルフィの腕の中にいた。
「何で逃げんだよ」
悪びれた風もなく、不思議そうにルフィは首を傾げる。
「折角、遊ぼうと思って誘ったのによ」
「だったら好きなだけロビンと遊んでたらいいでしょう!!」
ギリとナミはルフィを睨みつける。
「お前がいた方がもっと楽しいだろう?」
そう言ってルフィは屈託なく笑う。
それにな、とルフィは自らの手のひらに生えているロビンの手をナミの胸の上に乗せる。
「ナミを呼べって言ったのはロビンだからな」
ルフィは軽く後ろを振り向く。
ロビンは黙ってただ共犯の笑みを浮かべた。
しなやかな指がナミの胸に食い込む。
ナミはビクリと身を捩る。
その拍子にナミの身体はルフィの腕の中から零れ、ズルリと床へ落ち行く。
ナミはきつく目を閉じる。
次に訪れる筈の衝撃は、しかしなかった。
床から伸びた無数の手がしっかりとナミの身体を受け止めていた。
それは、数知れぬ手に捕まったことをも意味していたが。
ナミの背を支えていた手のひらが一斉に移動を始める。
いくつかの指は、つうとナミの背筋をなぞりながら移動する。
おぞましいと評するに近い、その感触にナミはぞくぞくと背を震わせる。
本体とは切り離された指先が伝えてくる振動に、ロビンは笑みを深くする。
その表情のまま、ロビンはルフィを見上げる。
「先に私が頂いちゃってもいいのかしら?」
「構わねぇさ。だいたい最初からそのつもりだったんだろ?」
そう言ってルフィは肩を竦める。
ロビンは身を起こすと、ルフィの頬にそっと手のひらをあてる。
「何もかもお見通し―なのね」
ごく薄い夜着を身につけただけの身体が資材を越え、ナミの元へと向かう。
ロビンは僅かに振り返り、目だけで笑む。
そして、指先はルフィの頬を離れた。
素足のまま音もなくやってくる女を、床に縛りつけられたままナミは睨む。
手首に、腕に、足に。一体幾つあるのか、考えるのさえ億劫になる程の枷に縛られている。
「助けてくれてありがとうとでも言えばいいのかしら?」
「じゃあ、どういたしまして、と言っておくわ」
怒気にまみれた視線をロビンは軽く流し、ナミの顔の傍にゆっくりと膝を折る。
そっと後頭部に手を入れ、そのまま頭を浮かせると膝枕の要領でナミの頭を自らの膝の上に置く。
「感謝にはお礼がつきものよね」
「あんたみたいに非常識な女にする礼なんてないわよ!」
ナミは真っ直ぐにロビンを見上げる。
「海賊にモラルを問われるとは思わなかったわ」
くくとロビンは低く笑い声を落とし、ナミは憮然とした顔で口を噤んだ。
「じゃあ、私も海賊の端くれになった訳だし―」
ロビンはちらとナミの身体をとりまく手に目をやる。
腰のあたりにたむろしていた手がもぞもぞと動き出す。
「――――!!?」
目の前の光景にナミは目を見開く。
床から、そしてナミ自身の胸の上から伸びた手は、それぞれ指先にシャツの縁を掛けている。
「欲しい物は奪うとしましょうか」
ナミの顔を覗き込むように見つめるその顔は、優しかった。
ずるり、とシャツは更にたくし上げられる。
白い肌は、足もとの灯火に照らされ赤い光を弾いている。
自らの身体が晒されていく、その様をナミは目の当たりにしていた。
「―やっ! ロビン、やめなさいっ!! やだってばっ、やめさせて、ルフィ!!」
身体はびくとも動かない。
ロビンの膝に乗せられた頭をナミは可能な限り起こす。
助けを求める視線に対する答えはない。
ルフィは泰然と腰を下ろしたまま身動き一つしない。
ただじっとこちらを見つめている。その表情を読むことはできない。
ナミはがくりと頭を落とす。
無駄だということは分かっていた。
"こうする"ことをルフィはとうに決めてしまっている。
その決定を覆すことなどこの世の誰にもできやしないのだ。
弧を描いた唇の隙間からふふと息を零し、ロビンは片手をナミの背にまわす。
プツン。
静寂の中にその音はやけに響いた。
ブラの留金を外された瞬間、自由になった胸は大きく揺れる。
ずるり、下着ごとシャツは捲り上げられる。
「いやぁっ!!」
そう叫ぶ他に抵抗する術をナミは持たなかった。
その声が止むと当時に、豊かな胸の膨らみが顕かとなる。
息を吸い、吐くたびにそれは誘うように上下に揺れる。
それまでシャツを捲り上げていた手が一斉に姿を消し、代わりに胸の下方に四本の手が生える。
その内の二本が下から胸を持ち上げるように輪郭に手のひらを合わせる。
たっぷりとした質感を楽しむようにゆっくりと波うち始めたその二本を跨いで、残りの二本はそれぞれ左右の乳房をなぞる。
指の腹を押しつけながら頂点へと向かう。
それでも決して乳首には触れることない。ゆるゆると撫ぜられ、そして時たま肌を爪で掻かれ、ナミはビクリと身体を震わせた。
うっとりとした表情でロビンはナミの瞳を覗く。
「思った通り敏感なのね―」
本体の手は相変わらずオレンジの髪を梳いている。
「もう硬くなってきてるわよ」
かぁと頬を染め顔を背けようとするナミをロビンは許さない。
頬に手をあて、動かないように固定する。
「見えるでしょう? ねぇ?」
ほら―とロビンは本体の腕を伸ばし、ツンと上向く乳首を直接摘み上げる。
「あぁっ!!?」
乳首を弄られる度に重い痺れが下腹の奥に伝わっていく。
解放されることのない痺れはただ澱のように溜まっていく一方だった。
どうすれば解き放てるのか、知ってはいる。しかし、ナミにはそれを口にすることも行うこともできない。
もぞり。
ナミは腰を浮かせ、僅かに自由の効くようになった両足に力を込める。
股を擦るように腿を合わせる。
それだけで、指先まで震えるような快感が広がる。
と、同時に更なる欲求が身体を突き動かす。これだけでは足りない、と。
膣を一杯に広げて、襞を擦りつけて欲しい。
何度でも突き入れてこの痺れを消して。
そう叫べればどんなに楽だろう。もはやズキズキと痛む程の痺れを抱え、ナミはただ低く唸った。
「どうしたの? そわそわして。 どこか痒い?」
どこまでも優しく、そして底意地の悪い声が振ってくる。
「見てあげましょうか?」
返事など、ましてや拒否の言葉も待つこともせず、ロビンはそっとナミの頭を置くとその足元に移動する。
それにつれ、床から伸びた手は、ズルズルと下着ごとスカートを引き剥がしていく。
ロビンがナミの足元に腰を下ろす頃には、ナミの下半身は剥き出しにされ、その傍らにはひしゃげた布が放り投げられていた。
「もう少し、広げた方がいいわね」
ロビンの言葉が終わるやいなや、固定されていたナミの足首が動く。
膝を曲げられ、踵は両の腿へと徐々に近づいていく。
くちゃり。
粘る水音を聞いた瞬間、広げられた秘唇にヒヤリと外気を感じる。
それから音もなく愛液が零れ落ちていくのも。
「凄いわね」
ほうとロビンは溜息をつく。
「こんなに綺麗なのに、こんなに濡らして―」
言いながら無造作に指先で亀裂をなぞる。
「んっ! あぁぁっ!!」
鋭い叫びと共にナミは背を反らせる。
くすくすと笑いながらロビンは濡れた指を擦り合わせる。
ニチャニチャと触れ合うたびに粘度を増すその音を聞かせるようにロビンは腕を伸ばす。
「イヤらしいコ」
乾きかけた指をロビンは舐める。
その指を口に含んだまま、言葉を続ける。
「で、どうして欲しいのかしら?」
ナミは真っ直ぐに口を引き結んだまま答えない。
「言わないと分からないわよ? それとも自分で・・・する?」
直後、胸の下に生えていた手がふっと消え、強い力でナミの腕が引かれる。
身体の下方へ。
今度は、秘唇の際で両の手首が拘束される。
指を伸ばせば、すぐに恥毛に触れナミは慌てて手を握り締める。
「どうしたの? 折角届くようにしてあげたのに」
残念そうな口調でロビンは頬に手をあてる。
「もっとし易くしてあげましょうか?」
―!!?―
限界まで広げられた両腿の付根に違和感を覚える。
指を生やされた、と気づいたのは秘唇を広げられた後だった。
「あ・・・・・やぁ・・・・」
左右に三本ずつ生えた指は優美な程の動きで、ぷっくりとした唇にその指先をかける。
中は、薄い襞の一つ一つまでもが灯りを反射して、瑞々しいまでの煌きを放っている。
それは熟れた果実を思わせた。
「何て綺麗」
そう言ってロビンは振り返る。
「そこからも見える?」
「あぁ」
淡々とした声が続く。
「凄ぇよく見える」
二つの視線に晒され、居たたまれなくなったナミは何とか足を閉じようと力を込めるが、両側から押さえ込まれた腿はびくともしない。
「暴れないの」
諭すようにロビンは言い、再び秘唇へ指を伸ばす。
人差指の先だけを膣内へと潜らせる。
ナミが目を見開く。
「ここが・・・・痒いんでしょう?」
上下に指を動かすと、コポコポと音を立てて水が湧き出す。
「もっと奥まで思いきり掻き回したいんでしょう?」
ナミは唇を噛む。そうしないと今にも自分の指は動き出してしまう。
そしてそうしたら最後、自分は肉の欲望には勝てない、そんな気がした。
「まだ、我慢する気なのかしら」
膣口を弄びながらロビンは軽く目を伏せる。
途端に、ナミの胸の先、乳首を挟んで両側にぬらぬらと光る物体が現れる。
濡れて弾力に富んだ、それは舌だった。
何ともいやらしい動きでそれはナミの肌を這う。
一方は尖りきった乳首を下から舐め上げ、もう一方はざらつく表面でその先端をこね回す。
「ん・・・・あ、あぁ・・・あぁぁぁぁっ」
ぬるぬるとした、それでいて種類の違う快感を同時に与えられ、ナミは思わず吐息を漏らす。
一度零した吐息は次の快楽の呼び水となる。
もうナミは声を殺すことができない。
両の胸の先端に群がり蠢く舌。
その動きが激しくなるにつれ、膣口はわななくように震える。
その震えを指先に感じながら、ロビンは当然とナミの痴態を眺めている。
「ほら、こんなにひくひくさせて・・・・可哀想なくらい」
ピクリ、と握りしめた手に込められた力が弱まる。
段々と広げられていく指先。
ロビンは目を細めながら、ゆっくりとそれを膣口にあてがう。
ぐちゅり。
耳を覆いたくなるほどの水音をさせ、指はあっという間に体内へと消える。
待ち望んでいた刺激にナミは眩暈を起こしそうになる。
「あぁぁぁぁっ!!」
高い嬌声。
それはどこか別のところから聞こえてきたような気がした。
しかし、それはまぎれもなく自分の喉から発せられた声であり、悦びに満ちていることをナミは自覚した。
そしてこの遊びから逃れることがもはや叶わなくなったということも。
続
[前頁]
[目次]
[次頁]