■ シスターの服 <ゾロナミ>
*パラレル風味 / 海賊狩りと泥棒猫の話*
木の生い茂る山肌を滑るようにして男が降りてくる。
かなりのスピードで目の前に迫り来る枝を払い、或いは避けつつ、土埃をあげながら男は斜面を下った。
ガサリと最後の枝を払いのけ、ようやく男は小道に出た。
男は一息つくと、乱暴に頭を掻き、その髪と同じ色をした木の葉を落とす。軽く身を屈めて足元の埃を払えば、茶色の煙が宙を舞った。
身を起こし、男は行く手を睨むように見据える。
山間の小道の奥。そこには古びた教会がただ一軒、ポツンと建っていた。
扉が軋む音をたてた。薄暗い教会内部に細い光の線が走る。重々しい音で扉が開け放たれると、木製の長細いベンチや、祭壇、その上に鎮座する十字架が輪郭を顕わにする。
教会の片隅、告解室の向こう側にいたシスターがその音に反応し、顔を上げた。
シスターの頬にかかる聖帽の黒いヴェールがさらりと揺れる。その隙間にオレンジの髪がちらりと覗いた。
やがて開いた時と同じようにして扉は閉じられる。再びの薄闇が教会の内部を包んだ。
教会の床に響く硬い足音は、真直ぐに告解室へと向かう。
部屋と呼ぶには狭すぎるそのスペースを区切るカーテンが開き、シスターとの間を区切る薄い板の手前に男が腰を下ろした。
シスターは無言のまま、ついたてにつけられた小さな扉を開く。僅かに覗える仕切りの向こうは、やはり薄暗い。
「何か告白したいことがおありなのですね?」
穏やかな若い女の声が、極狭い空間に響く。
「・・・・・・俺を散々こき使った挙句、稼ぎを根こそぎ掠めて逃げやがった女がいてな――」
低くくもぐった声で、男は訥々と語り始めた。まぁ、と悲しげな声をあげ、シスターは顔の見えぬ相手に問いかける。
「憎んでらっしゃるのですか? その女性を」
「そりゃあな」
「お腹立ちは尤もでしょうが、恨む気持ちは何も生み出しません。"汝の敵を愛せよ"との言葉もあります。一刻も早く貴方の心に赦しと安らぎが訪れんことを御祈り致しますわ」
「そうかい」
そう言って男は立ち上がる。
「来てみてよかったぜ。少しすっきりした」
「それはようございました」
目の前のついたてを見つめる男の顔に、邪な笑みが浮かぶ。
「これから、もっとすっきりさせてもらうけどな!」
「え?」
がらりと口調を変えた男は、喉の奥で低く笑った。
「まさかこんなトコに隠れてやがったとはな」
男の言葉に、シスターは形のよい眉を顰めた。その眼前で突然、二筋の閃光が走る。斬り裂かれたついたてが大音響と共に崩れ落ちたのは次の瞬間だった。
「探したぜェ、ナミ!」
「げっ!?」
神に仕える者としては甚だ不適当な言葉で驚きを表し、ナミは壁際にあとずさった。
直後、作り笑いをゾロに向け、ナミは口を開く。
「こんなトコまでどうしたの? ゾロ・・・・・もしかして迷子?」
「迷子って言うな!!」
逆上したゾロの隙を突くべく、逃げ道を探してチラリと動いた視線の先に、ゾロは刀を突き立てる。同じように片足を蹴りつけるように壁につき、ナミの逃亡ルートを完全に塞いだ。
「よくも、逃げやがったな俺の金持って」
今にも喰いつきそうな顔でゾロはナミを見下ろす。その辺のチンピラなら一睨みで退散するであろうその視線にも、ナミは怯む色を見せない。
「何よ!」
負けじと強い色を湛える瞳で、ナミはゾロを見上げた。
「あの賞金首の情報の出元は私でしょう!」
「やったのは俺だろうが!!」
ゾロの言葉にナミは、ふ、と目の光をやわらげた。
「見返りなら、ちゃあんと支払ったじゃない?」
ゾロを見つめる眼差しが見る間に妖しい光を発する。黒の袖に包まれた腕を、ナミはゾロの首の後ろに回す。首に下げた十字架のチェーンがしゃらりと涼しげな音をたてて揺れた。
襟元を囲む布の白以外には何の飾りもない黒い装束。ウエストのあたりを細い紐で絞っている為に、上半身のラインがあからさまに分かってしまう。衣装自体に飾り気がないだけに、否応もなく目が惹き付けられてしまうその豊かな胸を押し当てるようにして、ナミはゾロに身を寄せた。
ナミは己の唇に人差指をあて、意味ありげにペロリと舐める。爪先を立て、その唇をゾロの唇に近づける。
「・・・・・身体で、ね?」
囁く声が消え、二つの唇が重なる。ナミは性急な動きで、己の舌をゾロの中へと潜り込ませようとする。その瞬間、引き結んだ口を歪め、ゾロはニヤと笑った。
ナミから顔を離し、ゾロは両手でナミの唇と鼻を塞ぐ。
目を見張り、もがくナミに人の悪い笑みを向け、ゾロは口を開いた。
「そう何回も同じ手をくうかよ」
舌先に仕込んだ薬を飲ませるつもりだったんだろうが、今回はそうはいかない。自分を餌に、男を釣る。薬はこの女の常套手段だ。自分も引っ掛かっているからよく分かる。
もがきながらナミは抗議の声を上げる。ゾロの大きな手に阻まれて、それは振動にしか聞こえないが。やがて小さく喉が動くと、その振動も徐々に力を失っていき、ナミはぐったりとゾロの胸に倒れ込んだ。
長い睫毛が微かに震え、それからゆっくりと瞼が持ち上がった。
床に座り込み、壁にもたれたまま、ナミはぼんやりと前を見つめる。
靄のかかったような視界が不快で、ナミは何度も目を瞬かせたが、それでも視界ははっきりとしない。ぶるりと頭を振った途端、身体のバランスを失ったナミは、支えようとした手が全く動かないことに気づいた。
ナミの両手は身体の前で括られていた。
「目ェ覚めたか?」
目を見開いたナミに、ベンチの端に腰を下ろしていたゾロが声をかけた。
「・・・・ゾ・・ロ・・・? 私、どうし、て・・・・・・・!!?」
舌が縺れる。自分のものとは思えない舌足らずな声にナミは驚愕し、そこでようやく自分の置かれた状況を理解することができた。
仕掛け損ねた。
きり、とナミは唇を噛んだが、目に見えぬ何かが間に挟まっているかのように感覚は鈍い。薬の効果は完全には抜け切っていないようだ。
「床に転がしとくのも悪ィと思ってよ。その辺から毛布借りたぜ」
「悪い・・・・と・・・思ってんなら・・・・こんな、こと・・・・すんじゃ、ない・・・わよ」
睨もうとしても、目に力を込めることがすらできない。そんなナミの元へ、低く愉しげに笑う声と人影が近づいてくる。
片手に灯り、もう一方の手には酒瓶を持ったゾロはナミの正面で身を屈めた。灯りと瓶を床に置くと、その手を伸ばし、ナミの頤を掴んだ。
「言えよ。割符はどこにある?」
海軍支部のない小さな島では、賞金首は駐在に引き渡される。支部への照会後、駐在を介して割符と呼ばれる鍵に似た、加工不能の細い金属が渡される。割符の半分は照会元の支部にあり、それを持っていくことで懸賞金が支払われる。ナミがまんまと掠めて持ち去ったのがそれだった。
「喋るとでも、思う?」
ぎこちない動きでゾロの手を振り払い、ナミは笑う。その様を見て、ゾロもまた薄笑いを浮かべた。
「なら、好きに探させてもらう」
言うやいなや、伸ばした手が括られたままのナミの両手を壁に繋ぎとめた。
反らせた背が胸のラインを際立たせる。ゾロは口元を軽く歪めると、左手でナミの両手を縫いつけたまま、右手を眼前で揺れる豊かな胸元へと伸ばした。
大きな手のひらを押し付けるようにして、その弾力を楽しみながらゾロは聖帽のヴェールに覆われた耳元に唇を寄せる。
「神ってのの目の前で、仕える女を汚すってのも一興だしな」
甘い毒に塗れたその声から逃れようとナミは顔を背ける。
「こん・・・の、罰当たりっ!」
「罰当たり?」
さも可笑しそうにそう言って、ゾロは白い首筋をベロリと舐め上げた。
「そいつァ、お互いさまだろうが」
乳房にあてがっていた右手を僅かにずらすと、黒の衣装越しに下着の線が指先にあたる。服の上からその線を押し下げ、ゾロは人差指で胸の先端をかりかりと引っ掻く。
「・・・・・・・・っ!?」
短い息が押し出されるようにして、ナミの唇から漏れる。
ほくそ笑むゾロは、こりこりとしたその感触を楽しむように、幾度も指先でその輪郭をなぞる。
「硬ェもん仕込んでんじゃねェかよ。コイツか?」
低く笑う声が途絶えると、緑色の頭が胸元へと動いた。硬く尖ったナミの先端を服ごと口に含む。唾液を塗り込むように幾度も舌を這わせれば、服にぴたりと張りついた乳首が、艶かしいその姿をゾロの目の前に晒した。
濡らされ、色を濃くした黒の服に浮き出た突起を、ゾロは爪の先で弾く。
「んっ・・・・・」
薬の所為で感覚が鈍い。それは快感にも当てはまった。
焦れったいほどに穏かな感覚がナミの中にじわじわと湧き上がっていく。
ゾロが再び唇を突起に寄せた。ナミの見ている前で、薄い唇が二ヤと歪み、ゆっくりと開いていく。
ちらりと覗いた白い歯が、黒い突起にあてがわれる。
「あっっ!・・・・・く、んっ!!」
噛まれた、と思ったその瞬間、ぼんやりとした感覚の中を鋭い快感が走り抜けてきた。頭と身体の中心を貫く快感に、ナミは思わず合わせた脚の合間に力を込める。
だが、その刺激は続かなかった。
ゾロはナミの胸元から顔を離すと、からかうような眼差しでナミを見つめる。
「どうした? もの欲しそうな顔して」
壁に押し付けていたナミの両手から手を離すと、ゾロは身を引き、バサリと乱暴にナミの裾を捲り上げた。
身じろぎした太腿に両手をかけ、柔肌に指が食い込むほど強い力でゾロは両脚を広げる。
「隠しどこはこっちにもあるか」
愉しげにそう言うと、ゾロはナミの秘所へと顔を近づけた。
薄い布の上をゾロの舌が蠢いている。その度に細かく身体を震わせ、ナミは浅い息を吐いた。
黒い衣装の奥に息づく白のショーツは、音もなくゾロの唾液を吸い取っていく。
しっとりと湿った布越しに淡い恥毛がうっすらと透けて見える。その上部に、ぷくりと小さな粒が浮き上がる。
「ここか?」
ゾロは窄めた舌先で、その粒を震わせるように突いた。
「はっ!?・・・・・くっ!!」
ナミの息が跳ね上がったのを受けて、ゾロは舌の表と裏を交互に使い、その粒を責め続けた。
「どんどん硬くなるじゃねェか」
ゾロはショーツの中におもむろに手を挿し込むと、張り詰めたその粒を指先でくいと摘んだ。
「んうっ!!?」
瞬間、ビクリと跳ねた腰を掴み、ゾロは滑らかな粒の表面を指先で押し込む。
「・・・・ちょいと違うか」
口の端を歪め、ゾロはショーツの股にかけた指を引き、濡れた下着を剥がす。ナミの腰を両手で掴み、軽々と引き寄せる。黒の裾は捲りあげられたまま、引きずられた勢いで、ナミの括られた両手は頭上の床に投げ出される。
胡坐をかいた自身の腿の上にナミの尻を引き上げると、ゾロは灯りを手繰り寄せ、大きく開いた脚の中心を照らした。
「後は・・・・・」
低く呟くと、ゾロはもうとうに蕩けてしまっている入口に指を入れた。入口付近を探るようにぐるりと指を回せば、跳ねた脚が酒瓶を蹴倒し、毛布の上に大きな染みを作った。
ああ、とゾロは顔を顰めた。
「勿体ねェことしやがって」
苦々しくそう言うと、ゾロは酒瓶を手に取り、目の前に翳す。だが、透明な瓶の中は既に空になっていた。
「ま、これはこれで使い道があるか」
ナミの身体の上で、ゾロは瓶の口を傾ける。ほんの僅か残った雫がぽとりとナミの服の上に落ちた。
瓶の口を見せつけるようにナミに向けた後、ゾロは雫の垂れるその瓶をペロリと舐め上げた。
不意にナミの目が大きく見開かれる。これからゾロがするであろうことを察し、ナミは床についた両脚に力を込め、逃げ出そうと足掻く。だが、その脚は毛布の上で弱々しく震えては、すぐに崩れる。
「中までちゃんと探させてもらうぞ」
「ちょっ・・・馬鹿な真似しな・・・・・・っ、ああっ!?」
硬く冷たい塊が、ナミの入口を押し開き、ずぶずぶと体内に入り込んでいく。
「いい格好だな」
ゾロは胡坐を組んだ両脚を、心持ち持ち上げる。瓶を咥え込んだナミの秘所が更によく見えるようになった。
透明なガラス越しに、濡れた内部の壁がうねるように蠢いているのが分かる。
当人すらも見たことがないであろうその眺めは、ゾロを昂ぶらせた。
「凄ェ、な」
吐く息が熱を帯びる。己の身体ががそこに飲み込まれる様が想起され、ゾロのペニスは一気に硬さを増す。ゾロは検分するかのようにゆっくりと瓶を回した。
「い・・・ゃ、あ」
「そんなにイイのかよ」
喉の奥を愉悦で震わせながら、ゾロは空いている手で薄い茂みの奥で刺激を待ちわびている肉の粒を撫ぜた。
その途端にナミの中が締まり、瓶を持つゾロの手にもその振動が伝わる。
「入れられたまんまでココ弄られるの好きだったよな、てめェは」
ゾロの指は容赦なく、滑る粒の表面を擦り続ける。
「あ・・・・くっ・・・ん」
普通の身体であれば、とうに絶頂に達しているだろう。だが、いまだ薬の支配下にあるナミの身体は、快楽をただ溜め込むだけで、放出することができないでいた。
もっと深くを。もっと強く――――
そんな浅ましい肉体の欲望を察したかのように、ゾロは口を開く。
「言いたくなったら言えよ・・・・・」
ゾロはナミの中から瓶を引き抜く。ずるり、と大量の愛液を吐き出したナミの口が物欲しそうに開いては閉じる。
そうしたら、とゾロはずっと窮屈にしていたペニスを取り出し、ナミの秘所をその先端でなぞった。
「ぶち込んでやる。お前が満足するまで、何回でも、な」
悪魔の誘惑はどこまでも甘い。
「どうする?」
つぷ、と音をたてて、先端がナミの中浅くに潜った。細い瓶の口とは比べ物にならない圧倒的な質量に、ナミは眩暈すら感じた。
ナミの身体中、指の先まで煮え切らない快楽で満たされてしまっていた。苦しいほどのじれったさにナミは歯噛みする。
「・・・・十字架の・・・・中、よ」
口惜しげな口調でそう呟くと、ナミは胸元から床に流れたチェーンの先にある十字架を目で示した。
ゾロは無言でチェーンを引き千切ると、手のひらに十字架を乗せる。十字の上部をバキリと折ると、中の空洞から細い金属の棒が現れた。
満足気に笑み、割符をズボンのポケットに押し込むと、ゾロはナミの腰に両手をあてがう。
「お待ちかねだろ?・・・・・好きなだけ、イけよ」
そう言って細い腰を一気に引き寄せる。
悪魔をその身深くに迎え入れ、ナミは神の御前に高く歓喜の声を響かせた。
「・・・・っ、出す、ぞ」
息を弾ませ、苦しげに眉を顰めたゾロは、ナミの体内からペニスを抜き、なだらかな下腹部の上で二度三度と太い幹を扱く。一瞬、息を詰めた後、その先端から白い液体がほとばしり、ナミの肌を汚した。
床に両膝をついて身を屈め、荒い息を吐くゾロの下で、ナミはゆっくりと身を起こす。ようやく薬の抜けてきた身体をふらつかせながら、四つん這いになり、精を放ったばかりのゾロのペニスに唇を近づける。
「おい・・・何やっ・・・・くっ!!」
張りを失いつつも、まだ角度を保っているその先端を口に含み、中に残った精液を残さず吸い上げる。
肩を大きく震わせ、低く呻いたゾロに構わず、ナミは縛られたままの両手で幹を擦りながら、舌先で愛撫を加える。
すぐに筋を浮き上がらせた裏側を舐め上げ、ナミは艶やかな笑みをゾロに向けた。
「あんなにいいだけ焦らされたんだもの・・・・まだ、足りないの」
ゾロの前で大きく脚を開き、ナミは自らの手で濡れた秘所を広げる。
ごくり、と唾を飲み下し、煽られたそのままの勢いでゾロはナミにむしゃぶりつく。大きく喉を反らせたナミの口元は、笑みを湛えていた。
「全く、もう」
ナミはふらつきながら身を起こす。隣には力尽きたように伸び、寝息をたてるゾロの姿がある。
「ホント、底なしなんだから」
溜息をつき、立ち上がる。
酷い有様だ。あれだけ交われば当然でもあるが。
汗と体液でべとつく下半身を見下ろし、ナミはもう一度溜息をついた。
薬がダメなら、この身体で寝かしつけるしかない。どうあったって放出する分、男の方が疲労は早いものだ。
「悪いわね」
ちらりと笑みを浮かべ、ナミはそっとゾロのズボンのポケットを探る。
目当てのものを取り返した以上、長居は無用だ。
いい隠れ家ではあったんだけどね。
「汝の敵を愛せよ、か」
神様というのはなかなか粋なことを言う。
「またいつでも追ってらっしゃい?」
頬に一つ口づけを残し、悪魔をも手玉に取るシスターは教会を後にした。
costume request ゆき様
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