■ 白拍子 <ゾロナミ>



真夜中の風が鬱蒼と茂った木々の枝を揺らす。
ざわり、ざわり、と妙に不安感を煽るそのさざめきの奥に小さな社があった。

古びた建物の中では、燭台に灯された炎が建物の隙間から吹き込む風にふらふらと頼りなげに揺れている。 仄かなその光の先に静かに座す者の姿があった。
滑らかな白の御神酒徳利、同じく白の杯が並べられている低い祭壇に向かい、その者は静かに目を閉じている。
黒の烏帽子の下に流れるオレンジの髪。白の小袖に紅の単。古色のついた木の床を鮮やかに彩るのは紅の長袴。その土地に伝わる男舞の衣装に身を包んでいるのは、ナミであった。
僅かに俯けば、さらりと髪が流れ、薄く粉をはたいた首筋が顕わになる。それまで身じろぎもせずに正座をしていたナミが不意に眉を顰めた。仄明かりに照らし出されるその悩ましげな姿はどこか煽情的でもある。鮮やかな紅の引かれた唇からほう、と溜息が零れた。

「あーーっ!! もう無理っ!!!」
それまで姿勢よく正座していたナミは、突然、両手を思い切り伸ばし、両脚を前に投げ出した。
祭壇の下に突っ込むような形で伸ばした脚を擦りながらナミは顔を顰める。
痺れの残る脚を尚も揉みつつ、ナミは頭を傾け、首筋を伸ばした。オレンジの髪の上に乗せられた烏帽子がふらりと揺れ、ナミは慌ててそれを両手で押さえる。
「こーんな重いもん着せられた上に、ただお行儀よく座ってろって言われてもねぇ」
そう零してからナミは、祭壇の上に目をやり、ニコリと笑う。袴の裾が乱れるのも気にせず、ナミはどかりとその場で胡坐をかくと、おもむろに祭壇の上に手を伸ばした。
厳かに供えられた徳利を躊躇いもなく掴み、隣の杯に思い切りよく注ぐと一息でそれを飲み干した。
「生贄役ったって」
不穏な台詞をさらりと口にし、ナミは更に二口、三口と杯を重ねていく。
「多少の役得がなきゃやってらんないわよねぇ?」
歌うような口ぶりで、空になった杯に再び酒を注ぎ足そうとした時だった。
「おいコラ!!」
建物の隅から不機嫌そうな声が発せられ、灯りの届かぬ所でのそりと闇が動いた。
黒染めの着物に網代傘。一見、僧形のようにも見えるが、それにしては着方が雑で、合わせの隙間からは腹巻がのぞいていた。
何よりもすぐ傍らに立てかけてある三振りの刀が、男が僧ではないことを物語っていた。
「何よ?」
胡坐をかいた格好のまま、ナミはつるりと尻を滑らせて闇の中のゾロと向き合った。
「生贄の分際で文句垂れるは酒は飲むわ、いい身分じゃねェかよ」
「何? アンタも飲みたいの?」
「違うだろが!!!」
逆上したゾロを眺めてきょとんとしたナミは小首を傾げ、差し出した徳利を床に置いた。
「原因はてめェだろうって言ってんだよ。化物退治だか何だか知らんが勝手にホイホイ引き受けやがって」
ゾロの小言にナミは「えー」と口を尖らせる。
「あんなに困ってる村の人たち見捨てて、アンタ、心痛まないわけ? 相変わらず人非人ねぇ」
それに、とナミはにっこりと微笑んで、続きを口にした。
「いいお金になるしね」
・・・いい金にしたのはてめェだろうが。
敢えて口にはせずにナミを見つめたゾロの脳裏に、交渉後の村長の憔悴しきった表情が浮かんだ。
・・・化物よりタチ、悪ィんじゃねェか? コイツこそ。
じっと見つめられたナミは、不意に目を細めてゾロを見返した。
「大丈夫よ。心配しなくても」
「あ?」
何のことかと眉を顰めたゾロにナミはどんと自分の胸を叩いてみせた。
「アンタへの分け前だってちゃんと考えてるわよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・二割」
「・・・・・・・・・・・オイ」
発せられた低い声音に、ナミは何よ、と勝気な表情を浮かべて身を乗り出した。
「おとり作戦なんてのはね、おとり役が一番危ないのよ! 身体張ってその役やろうってんだからそれくらいいいじゃない!!」
と言う訳で、とナミは宥めるような笑みをゾロに向けた。
「残り二割分はアンタが頑張るのよ?」
「てめェなァ」
やれやれと溜息をつきかけたゾロの動きが、ぴたりと止まった。得体の知れない悪寒が全神経を逆撫でしていく。
目の前のゾロの様子にナミの顔にも緊張の色が浮かんだ。
立て掛けた三本の刀を一手に握り、ゾロは身を起こす。網代傘が乾いた音をたてて床に落ちた。
床に片膝をついた姿勢でゾロはじっと相手の出方を伺う。
どこから来やがる?
僅かな空気の流れ、物音をも逃すまいとゾロは全身の感覚を研ぎ澄ます。燭台の炎が不意に大きく揺らめく。ゾロの目が鋭さを増し、親指が鯉口を弾いたその時だった。
「何、これっ!!?」
身を屈め、息を殺して成り行きを見守っていたナミが突然に立ち上がり、何かから逃れようとするように足をばたつかせた。ナミの足先で長袴の赤が、まるで炎のように幾度か翻り、そのまま引き摺られるようにナミの身体は移動し、壁に背を打ち付けるようにして止まった。
「ナミっ!!?」
オレンジの頭から烏帽子が滑り落ちた。壁に縫いとめられたまま、背を打った衝撃に咳き込むナミのもとへとゾロは駆け付けようとするも、その意に反して足はピクリともしなかった。
何事かと伸ばした手のひらに何か縄のようなものが触れた。そう思った瞬間、ゾロの手首にも同じものが巻きつき、思いも寄らぬ力でゾロもまた身体ごと背後へと引かれ、ナミに向かい合うような形で壁に叩きつけられた。その衝撃で思わず取り落とした刀が足元の床に突き刺さる。
「くっ!!」
腕に力を込め、ゾロはその細い縄を引き千切ろうとする。僅かに弛んだ締め付けに、手元をよくよく見てみれば、それは縄ではなく植物の蔦のようなものだった。ゾロがその手を床に刺さった刀の柄に伸ばそうとした瞬間、堂の隙間という隙間から一斉に緑の蔦が湧き上がった。
「なっ!!?」
目を見張るゾロの前で、無数の蔦がわさわさと揺れる。それは獲物を嬲ろうとするおぞましい意思の現れのように思えた。
紛れもない悪意を前に、ゾロが反射的に刀に手を伸ばした瞬間、壁際を彩っていた緑がこぞってゾロのもとへと突き進んだ。ゾロの腕に足に数え切れぬほどの蔦が絡まり、まさに柄に触れようとしていた指先が虚しく宙をかいた。
「・・・の野郎っ!!」
悪態をつきながら前を睨むゾロの目に、同じく壁に縫いとめられたまま、もがき続けているナミの姿が映る。
「おいっ!! 大丈夫か!?」
ゾロの声に、僅かに俯き加減だったナミの顔が上がる。
「何とか、平気。そっちは?」
弱々しくも浮かんだ笑顔に、ゾロはほっと一つ息を吐いた。
「ああ。身動きはとれねェがな」
ゾロの腕の筋肉が張りつめるが、幾重にも巻きついた蔦はビクリともしない。
「これが・・・・例の、化物?」
「だろうな」
「私達をどうしようってのかしら?」
「分からん」
短く応じ、ゾロは口を噤む。敵の出方が読めない。これだけの手数と力があるのだから首を絞めるなり折るなり、自分達を仕留めようと思えばすぐにでもそうできる筈だ。
何を、狙っている?
得体の知れない悪寒が足元からざわざわと競りあがってくるのを感じ、ゾロは頭を振った。
「――――――!!?」
声にならない悲鳴に、ゾロは弾かれたように正面を向いた。 そこには目を見開き、何かに抗うように身を捩るナミの姿があった。
「どうしたっ!?」
鋭い声を走らせるゾロに、ナミは面を引きつらせながらも気丈な眼差しを返した。
「へ、平気。何でも・・・・っく!」
跳ねるように背筋が震え、言葉は途中で途切れた。
ゾロは目を眇める。ナミは蔦に絡め取られたまま、表面上は事態に変化は見られない。だが。
唇を噛み締めたまま、時折、腕や脚に不自然な力が込められるのが分かる。その度に白の袖と紅の裾がひらひらと揺れる。
まるで舞っているかのように。
永く伝えられてきた舞の衣装。だが、その由来は身をひさぐ遊女の井出達にあった。そのことは二人には秘されていた。

「・・・う・・・く」
僅かな呻き声がナミの口からあがる。ゾロが見つめていることに気づき、ナミはぎこちない微笑を浮かべた。 だが、その笑顔はすぐに引き攣り、口元からは苦しげな息が零れた。
一体、何が?
探ろうとしたその時、ナミの胸元からするりと蔦が伸び、小袖の上を這っていくのをゾロの目が捉えた。
淡く照らされた白の小袖。その合わせの内から緑の蔦が這い出ている。その意味するところを理解した瞬間、ゾロの目がはっと見開かれた。
ゾロの目の前で、蔦は小袖の衿を引き摺るようにして肩の方へと進んでいく。衣擦れの音と共に、徐々にナミの胸元が顕わになっていく。その時、ナミの悲痛な叫び声が弾けた。
「やっ、い・・・やっ!!」
いやいや、と何度も頭を振り、蔦から逃れようと、或いは蔦の動きを留めようと身を捩る。だが、ナミの身体は蔦に繋がれたまま、ほんの僅かの自由しかない。力なく揺れる袖と裾。その姿は、蜘蛛に囚われた蝶を思い起こさせた。
衿をその身に掛けた蔦がナミの肩を越し、背へと回る。
「いやぁっっっ!!!」
ナミの絶叫と、片肌が剥かれ、蔦に絡まれた乳房がゾロの目の前に晒されたのはほぼ同時だった。

豊かな乳房を、まるで網にかけるかのように蔦は幾重にも巻きついている。滑らかな肌の上で、それらが禍々しく蠢く度に、乳房は揺れ、その形を変えた。
「ゾ・・・ロ・・・」
震える声で名を呼ばれ、ゾロは瞬間、我に返った。腕の一本でもいい、蔦から抜け出そうともがくゾロの耳に、ナミの苦悶の声が届いた。
乳房に巻きついた蔦の一本が、その先端をもたげ、ナミの乳首を刺激し始めた。くるくると先端をなぞるように蔦が動けば、徐々に乳首は硬さを増し、その輪郭を顕わにする。蔦は、ナミの先端がすっかり立ち上がったのを確認するかのように一旦その身を離し、一拍を置いて、乳首にその身を絡ませた。
「あぁっ!!?」
きちきち、と巻きついた蔦は嬲るように乳首を幾度も締め付ける。その度に、細い肩が爆ぜ、蔦に絡まれた乳房が艶かしく揺れ動いた。
乳房に巻きついた蔦が肌の上を這い回る感触に、時に鋭く締め付ける乳首への刺激が重なり、ナミを責める。
「いや・・・・あ・・・」
嫌悪にまみれていた筈の悲鳴に、微かに甘い響きが混ざり始める。それを否定するかのようにナミは唇を強く噛み、声を殺した。
その抵抗を嘲笑うかのように、脱げていない小袖の下で蠢いていた蔦はナミの下肢へと向かう。 やがて袴の下へと潜り込んだ蔦の先端は、下着の上からちろちろと舐めるようにナミの秘所を探り始めた。
「・・・はっ、あ!」
胸への刺激で呼び覚まされた情欲を直接に煽られ、ナミは堪らず、喉を反らして声を上げた。
秘所の形を確かめるように這う蔦は、気づけばその数を増している。下着の上から秘唇を割り、一方は上部へ、もう一方は下部を嬲る。
上部へと向かった蔦は、つい先程乳首にしたように、立ち上がりつつある突起を捏ねるように動く。びくりとナミの腰が跳ね、一度離れた蔦はすぐに突起に取り付き、再び蠢き始める。
「や・・・・ダメ・・・・っ」
秘所の下部へと向かった蔦に、下着越しに膣を浅く刺激され、ナミは弱々しく呟く。
間断なく続く甘い責め苦に、膨らんだ情欲は噴き出る先を求めるようになっていた。 嫌だ逃れたいと思うその心とは裏腹に、この快楽に囚われていたいと願う自分が確かにいることをナミは自覚していた。
嫌悪と快楽の狭間に迷うナミの心を読んだかのように、袴の中でするりと伸びた蔦がナミの右の腿に巻きつく。
何事かと思う間もなく、右腿は持ち上げられ、下着の隙間に幾本の蔦が潜り込んできた。しかし、その蔦はナミの秘所を責めようとはせず、逆に下着を持ち上げ始めた。
ピリ、と布の裂ける音を耳にし、ナミの顔からすっと血の気が引いた。
ゾロの視線がナミの下半身へと動く。その前で、袴の中心が不自然に盛り上がり、次の瞬間、弾けるようにして裂けた。

大きく広げられた脚の真ん中で、数本の蔦がまるで鎌首をもたげる蛇のようにゾロの方を向いていた。
「・・・いや・・・お願い・・・・・見ないで・・・・」
懇願する声は弱い。
その声を掻き消すように、布の裂ける音が響く。ナミの秘所から伸びた蔦は、袴の亀裂を広げるように外へと向かった。
ゾロの目の前で、淡い茂みが顕かになり、その茂みの前で蔦はゆらゆらとその身をくねらせている。 やがてその先端は、ゾロに見せ付けるようにナミの秘唇を大きく押し広げた。
揺れ動く炎が、ぽつりと膨らんだ突起を照らし出す。そこをめがけて一本の蔦がざわりと動いた。
「・・・・・・・あぁっ!!」
それまで与えられてきた刺激の所為で、すっかり敏感になった突起に蔦の先端が触れた。
一際細い蔦が突起の側面に巻きつき、僅かに被った薄皮を押し下げていく。
「はっ・・・あっ、は、ぁっ!!」
蔦がゆるゆると動く度に、ナミの口からは止めどなく荒い息が零れていく。
過ぎた快楽に思考は徐々に溶かされていく。虚ろな瞳の前で、二本の蔦が揺れている。そのことを認識するのにも暫しの時間が必要なほどだった。
ナミの目の前で二本の蔦の先端がぷくりと膨らんでいく。親指大ほどになったそれの真ん中に亀裂が走り、やがてそれはぱくりと口を開けた。それは例えではなく、本当の口だった。まるで食虫植物のような口が、ナミの前で二度三度開く。棘のような無数の牙の合間から、樹液のような汁がぽたりと流れ落ちた。
その異様な姿を存分に見せつけた後、蔦はそれぞれの目的の場所へと動く。
ナミが目を見張る先で、一方は蔦に巻かれた乳首の先端へと、もう一方は同じようにして剥き出しにされた突起へと向かっていく。
「そんな・・・ダメ・・・いや・・・・っ!!」
濡れた感触が乳首を包む。吸い上げられられる感覚にナミはびくりと大きく身体を震わせた。
吸い付いては離れ、吸い付いては離れ、その度に乳房は大きく揺れ動き、ナミの唇からははっきりそれと分かる嬌声が上がった。
「あっ・・・あぁっ・・・つっ!!」
乳首の側面を、細い牙で掻かれた際に走る痛みすら今は甘い刺激となってナミを揺すぶる。
やがてもう一方は、ナミの広げられた秘唇に辿りつき、剥き出しになって震える突起の前でその口を開ける。
「あぁぁぁぁっ!!!」
すっぽりと突起を覆われた瞬間、ナミの口から一際高い声が上がった。
がくがくと腰が震え、その衝撃で、突起に取り付いた蔦が上下に振れる。その動きが更なる快感をナミにもたらすこととなった。
ゾロの視線を感じる。けれども声を殺すことができない。見ないで。やめて。やめないで。見ないで。
ナミの中で、快感が羞恥心と嫌悪感を凌駕していく。ゾロの方にも同じことが起こっていた。
乳房に絡まる無数の蔦。乳首に取りついたままうねる蔦。押し広げられた秘所にも蔦が吸い付いている。
柔肌を蹂躙し、蠢く蔦、蔦、蔦。
おぞましい筈のその光景に、だが、ゾロは目を奪われた。
見ないで、と幾度も呟く声は耳に届けど、どうしても目を反らすことができなかった。
淫らな声で歌い、艶かしく舞う目の前の女に、ゾロは目を奪われていた。
「あっ・・・・く、ぅ」
膨れ上がった快楽にピシリと亀裂が入るその感覚に、ナミの身体が不意に硬直した。
これ以上、耐えられない。けれど。
快楽に濡れた視界にゾロの姿が映る。
「や・・・・・こんな、に・・・・イかされ・・・たく、な・・・・」
その瞬間、二箇所を同時にきつく吸い上げられ、ナミは喉の奥で悲鳴をあげた。亀裂が広がる。噴き出してしまう。
「も、ダメ・・・・・・・・・くっ・・・イぃっっっ!!!」
持ち上げられた右足が、引き攣るように二度三度揺れ、ナミはがくりと頭を垂れた。
「おい、ナっっ!!?」
その瞬間、我に返り、呼びかけたゾロの声は途中で止まった。
二人を絡めているものたちを除き、壁にはりつきざわめいていた蔦が一箇所に集まりつつあった。
みるみるうちに床に、平たい巨大な緑の花が生まれた。その中心から、無数の蔦が立ち上がり、互いに絡み合い始め、やがて木の枝ほどの太さになった。濡れてぬらぬらと光るそれは、枝というよりも男根のように見え、その瞬間、ゾロは目を剥いた。
ぐったりとしたままのナミのもとへと、それは向かう。その目的は明らかだった。
先触れの蔦が秘唇を割り広げる。鮮やかなピンクの亀裂に、禍々しいものが宛がわれる。
「待てこら、てめェ」
押し殺したような低い唸り声とは逆に、その瞳は殺気に溢れていた。
「其処は俺だけのモンだ」
血が沸騰する。
身体中に渦巻く怒りに任せてゾロは腕に、脚に力を込める。
ぶつり、ぶつり、と音をたて、蔦が千切れていく。腕が伸び、床に突き刺さったままの刀の柄に指がかかる。その後は刹那の出来事だった。
「勝手に訳の分からねェモン、挿れんじゃねェっ!!」
飛び出したゾロを蔦が追う。その蔦に追いつかれる前に、まさにナミを貫こうとした蔦を斬り落とし、返す刀で床に広がる花の中心を貫いた。
その瞬間、ゾロを追っていた蔦は力なく床に落ち、ナミを捉えていた蔦も力を失い、垂れ下がった。
ぐらりと倒れかけたナミを受止め、壁にもたれさせるようにして座らせた。燭台を左の手に持ち、小袖や袴の中に残った蔦を取っていく。
「う・・・・・ん?」
か細い声と共に、長い睫毛が細かく震えた。
「あれ? 私・・・・・・・?」
大きく開いた目できょとんとゾロを見やり、ナミは小首を傾げる。その視線がゾロの顔から、自分の胸元に移る。
片方の乳房を露出させたままの格好で、間の悪いことに、中に入り込んだ蔦を取るべく小袖の中に差し込まれてたゾロの手がそこにあった。
「何してんのよ! スケベっ!!」
「待て! ぐあっ!!!」
拳骨をくらい仰け反るゾロの手には蔦が握られていた。それを目にした途端、ナミの顔に緊張が走った。
「そういや、アレは!!?」
小袖の胸元を合わせながらナミは尋ねる。
頬を擦りながらゾロは無言で、花に突き刺したままの刀を親指で示した。
「よかった・・・・・・・」
心底安堵したようにナミは身体の力を抜いた。
「ちっともよくねェ」
その前にゾロは不機嫌そうな顔を近づける。
「訳の分からねェもんに絡まれるは殴られるわ」
愚痴るゾロに、ナミは、何よと口を尖らせる。
「あんたなんてまだいいわよ。私なんて・・・・・」
その先を言いよどんだナミに、ゾロは人の悪い笑みを向ける。
「私なんて、何だよ?」
ぐっと言葉を詰まらせたまま、睨んでくるナミを見て低く笑いながら、ゾロは足元に転がっていた徳利を引き寄せた。胸元を押さえるナミの手をどかし、ぐいと小袖の衿を開けようとした。
「なっ、何?」
「気持ち悪ィだろ? 洗ってやる」
そう言ってゾロは、ナミの目の前で徳利を振った。
躊躇う手を外し、胸元を開ける。
柔らかな乳房に残された跡は、煽情的であり、痛々しくもある。そこに徳利の中身を垂らし、ゾロは自らの袖で拭ってやる。
「脚、開け」
こともなげに言ったゾロをナミは唖然と見上げる。
「い・・・いい。自分でするから」
「傷ついてねェかみてやる。自分じゃ無理だろうが」
ゾロはナミの脚の間に自らの足を割り込ませ、出来た隙間を両手で広げる。ナミは顔を背け、ゾロのなすがままに任せた。
「・・・・っ!」
流された酒の冷やりとした感覚に、ナミは思わず身を竦ませた。
「どっか、痛ェか?」
「・・・大丈夫。何ともない。冷たくて吃驚しただけ」
そうか、と頷きいた後、ゾロはすいと指先を亀裂に這わせる。
「やっ、あ!」
「大丈夫そうだな」
ニヤと笑い、ゾロはその指先を膣口に宛がう。
「そこは何にもされてないってば!!」
「そうか?」
身を引こうとするナミをゾロの指が追う。
「その割には、びしょ濡れじゃねェか」
僅かに指先を進ませれば、そのまま指は容易くぬかるんだ体内に飲み込まれていく。
「さっきイったろ? お前」
意地の悪い声音で囁くゾロを、ナミは潤んだ瞳で見つめる。
「そんなこと・・・ない・・・っ!!」
頭を振るナミを見て笑うと、ゾロは中を掻いていた指を引き抜く。
「あ・・・・や・・・・」
もどかしさに身悶えるナミに、ゾロは囁く。
「・・・・正直に言ったら、いいモンやるぜ?」
「アンタって、あの化物よりタチ悪い」
恨めしげに睨み上げてくるナミを見て、ゾロは可笑しそうに口元を歪める。
「偶然だな。俺もさっきそう思った」
そう言ってゾロはナミのもとへとその身を進ませ、自らの着物の前を開けた。


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